前書き

本編は「DesireStrikerS R1」とは似通ってますが続編ではありません。 HPでのリクエストで思いついた「DesireStrikerS」R2ver.です。

かなりR1と設定が違ってますが、ご容赦下さい。

<ゼロレクイエム後、R2第一話の半年前に死んだルルーシュが逆行>

 

 

 

皇暦2019年10月10日。

あのフジ決戦、後に言われるダモクレス戦役から既に2ケ月が過ぎ去っていた。

エリア11は皇帝直轄領・日本と名を変えた。

ブリタニアが占領後、9年を経て日本の名を取り戻していた…名前だけではあったが。

この時、世界は神聖ブリタニア帝国・ルルーシュ皇帝の独裁政権下にあった。  

 

 処刑場に向う磔状態の黒の騎士団幹部や、叛逆者達の群れ。

 沿道には多くの一般人が不安と、憎悪と、絶望感に苛まれる姿。

 それを高みから見下ろす俺が居る…冷徹な仮面を纏って。

 自分の心がズタズタになるのも、もうすぐ終焉を迎える安堵と共に。

 人々の怨嗟の声が、恐怖の視線が俺に集約するのを肌で感じる。

 

 しかし後悔は無い…これを演出してきたのは俺自身なのだから。

 この時の為に、俺は圧政と見せ掛けた演出を行ってきた。

 唯一皇帝たる覇者ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの権勢を示す為…

 此れは、世界の悪意を自分自身のみに集中させる為の目論見なのだから。

 

 それこそが「ゼロレクイエム」 ここで俺が消える事で、優しい世界が齎される…そうなると俺は信じていた。

 だが、この時の俺は何も気付かなかった。  純粋な悪意の前には、全てが無に帰してしまう儚さの事を。

 俺は…無知な愚者でしか無かったのだと思い知らされる事を想像だにせずに…。

 

 神聖ブリタニア帝国・第99代唯一皇帝(Holy Britannia Empire The 99th only Emperor)

 超合集国最高評議会議長(The Super United States Chairperson Supreme Council)

 黒の騎士団C.E.O (Black Knights Hospitalers Chief Executive Officer:最高責任者)

 全世界を制圧した歴史上最強の統治者、それが俺…ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだった。

 

 そう見せ掛けたシナリオが破綻するのも予定通り…その筈だったのに。

 だが全ては俺の罪だ…所詮、愚者は己の知恵に足を掬われる運命。

 余りにも愚かな俺は、身近に蠢く悪意の策謀を気付けなかったのだから………。

 

 

As soon as dreams and phantasms can compare entirely While playing a Requiem of the Despair

全ては夢幻の如くなり…絶望の鎮魂歌を奏でながら。

 

 

「 ギアス真世界 DesireStrikerS R2 」  Turn.00 『 絶望の鎮魂歌 〜 Requiem of Despair(加筆改稿版)』

 

 

 

フジの戦場で、上空に撃たれた一発のフレイヤが爆発。

誰も傷つく事の無い、その一撃は戦いの終焉をも示していた。

驚愕する星刻や扇達の上に、一人の覇者の声が轟く。

それは、彼等にとって残酷な一節であった。

 

「全世界に告げるっ!

 私は、神聖ブリタニア帝国皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであるっ!

 もはやシュナイゼルは、我が軍門に下った。これによってダモクレスも、フレイヤも、全てが私のモノとなった。

 黒の騎士団も、私に抵抗する力は残っていない。それでも贖うというのなら、フレイヤの力を知る事になるだけだ。

 我が覇道を阻む者は、最早どこにも存在してはいない。

 そう…今日この日、この瞬間を持って世界は我が手に落ちたのだ。

 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。

 世界よっ!…我に従えっ!…我こそが全世界の覇者であるっっ!!」

「All Heil Lelouch !」

「「「「「「「「「「「All Heil Lelouch !」」」」」」」」」」」

 

世界に響き渡るルルーシュの宣言と、それを称える歓呼の嵐。

そして世界中に流れる悲嘆の声…何も終わっていなかった。

結局はブリタニアの皇族闘争でしかなかったという現実が、世界に絶望を齎した。

そして黒の騎士団にとっても、それは悪夢でしかなかったのだ。

彼等は自分達の無力さに苛まれながら、暗い未来に向かって進むしかなかった………。

 

それから2ケ月後、ルルーシュに逆らう者は大半が囚われの身となった。

その内、黒の騎士団幹部や天子、皇神楽耶、ナナリー等の公開処刑が決定。

皇帝直轄地である日本のトウキョウで行われる事となった。

 

扇が、玉城が、カレンが、杉山が、黎星刻が、藤堂が、千葉が…。

黒の騎士団の幹部の大半が十字架で磔となってる姿は民衆の涙を誘った。

元ラウンズのアーニャが、ジノが…そして皇神楽耶が、天子が、いたいけな姿を晒す。

その後ろに磔の上、鎖で繋がれたシュナイゼルの姿もあった。それを見つめるジェレミア・ゴットバルト。

皇帝ルルーシュの御座車の先端には、鎖で繋がれた下半身不随のナナリー。

それらを見つめながら、心の底で彼等に詫びるルルーシュではあったが。

 

 いよいよ終わりの日か…長い様で短い激動の日々だったな。

 ナナリー…カレン…神楽耶…皆、済まん。もう間も無く、お前達の苦渋の時は終わるだろう。

 ゼロレクイエム…その最終章の幕が上がるのだから。

 俺は悪逆皇帝として、世界中からの恨みを背負って退場するだけだ。

 後は英雄ゼロが、お前達を導くだろう。上手くやれよ…スザク。

 

パレードの先導車が止まり、護衛のナイトメアも停止する。

その先に立つ黒いマントを纏った仮面の男…まさか?

静寂が、世界を覆った…と言っても過言では無かったのかもしれない。

解放への光…英雄ゼロが、其処に立っていたのだから。

驚きの表情を見せつつ、ルルーシュは内心で舞台の幕が上がったのを喜ぶ。

 

 来たか、スザク…全てが始まった…終わりの始まりだ。

 やっと全てが終わる…短い様で長かったが、これで全てが終わる。

 ロロ…ユフィ…シャーリー…俺も、お前達の処へ行くぞ。

 ふふ…だがムリかもしれんな…俺一人だけは、きっと地獄行きだろうから…な。

 

 この時、俺は事態を甘く見ていた事に最初は全く気付かなかった。

 意外な事態が推移するのを呆然と見ているしか出来なかった。

 余りにもイレギュラーな事態が、俺の思考能力を奪っていた…。

 俺の眼下で…ジェレミアが、脳天から真っ二つにされた時から…。

 しかも、俺の剣を持ったゼロに扮してるであろうスザク自らの手で。

 

周辺の群集は、どよめきから悲鳴と阿鼻叫喚へと変貌した。

余りにも残虐無比な場面が、目前で展開されてしまったからだ。

英雄ゼロが甦ったと、その希望の光を見た思いを踏み躙られるかの様に。

それは世界中の人々に取っても信じられない出来事であった。

 

ゼロがナイトメアの銃撃を避け、人間技とは思えぬ速度で迫る。

他の兵士が向おうとするのを制止したジェレミアは、右腕に仕込んだ剣を出すとゼロを迎え撃った。

此処までは…全て予定通りだった…その筈だった。ゼロがジャンプし、ジェレミアの肩に足を掛けて飛び越えようとする迄は。

だが…此の瞬間からシナリオが変わってしまった事に、彼は何も気付かなかった。

ゼロは、そのまま上へとジャンプし上空からジェレミアに襲い掛かったのだ。

ジェレミアは不測の事態に、呆然として立ち竦んでしまう。

 

 如何いう事だ…枢木卿? まさか…卿は、ルルーシュ様を…ずっと欺いて騙していたのか?

 不覚っ!…無念だ…陛下、お役に立てなかった私めを…お許し下さい…。

 

「ジェ、ジェレミアアアアアアッ!!」

 

ルルーシュの悲痛な叫びが辺りに響く最中、呆然と脳天唐竹割りを受けて…彼は、絶命した。

何が起こったのか把握出来ぬままに………。

ジェレミア・ゴットバルト死亡。

 

そして、いきなり護衛のナイトメアが全て爆発する。皆の視線がそちらへ向いた時、銃声が轟く。

ゼロが何時の間にか銃を取り出し、磔になっているカレンを撃ち抜いたのだ。

カレンは、ゼロを呆然と見つめながら…そのまま、その生涯を終えた。

紅月カレン=カレン・シュタットフェルト死亡。

 

 スザク…アンタ…一体?…まさか、またルルーシュを騙したの?

 ルルーシュ…アンタって、よくよく友人運に恵まれなかったね…でも私も同じか…アンタを信じきれなかったバカだもんね…。

 もし生まれ変われるのなら…今度こそは素直に為りたいな…ムリかな?

 こんなにアンタが好きだったのにね…此れも自業自得よね…。

 

「カ、カレ〜〜〜〜ンッ!!」

 

そのまま次々と銃を乱射するゼロ。玉城が悲鳴を上げ、杉山が苦痛を上げる。

千葉も呆然と撃たれ…藤堂は撃たれて絶句するのみだった。

玉城真一郎、杉山賢人、藤堂鏡志朗、千葉凪沙…相次いで死亡。

 

 チックショ〜〜〜! ルルーシュの想いを踏み躙りやがって…アイツの苦しみを全て無にする気かよぉ?

 誰が、ゼロに成り済ましやがったんだぁ〜っ?

 やっぱり俺の親友は騙されてやがったんだな…地獄から呪ってやるううううっ!

 

 ゼロに射殺か…誰かは知らないけど、結局…俺達ってゼロに振り回されっぱなしだったな。

 

 藤堂さん…無念です…せめて…私の想いを、お伝えしたかった…。

 

 ゼロ?…いや…本物は、あそこにいる…ならばスザク君…なのか?

 君が…何故…俺達を、処刑前に…殺すというのだ?…何故だ??

 

「玉城ぃ…杉山…藤堂…千葉…何故、何故だ…?」

 

呆然と惨劇を見つめながら呻くルルーシュを他所に、ゼロ…スザクの暴虐は続く。

アーニャも、ジノも…ただゼロに蹂躙されるだけであった…磔の身なのだから。

元ナイトオブラウンズ、アーニャ・アールストレイム、ジノ・ヴァインベルグ死亡。

 

 折角、私の記憶が戻ったのに…オレンジ殺されたら詰まらない…スザクって最低なんだ。

 

 くそ…スザクの野郎…呪ってやるからなあ…あのクソッタレッ!

 

そして遂に天子が撃たれ、絶叫する黎星刻を凶弾が襲い…彼も、息絶えた。

己の無力さに苛まれながら。 中華連邦天子、黎星刻…共に死亡。

 

 神楽耶…星刻…私…死んじゃうの? まだ死にたくない…死ぬのなんか嫌だよお……。

 

 天子様…何も出来ぬ無力な私をお許し下さい…。何も気付けなかった私を許してくれ…ルルーシュ。

 

「アーニャ…ジノ…天子…星刻…どうして…こんな…??」

 

そして神楽耶にも凶弾が襲った…気丈に受け止める神楽耶。

彼女は、この時に知った…彼がスザクだという事を…その悪意を。

それに何故、気付かなかったのか…だが、もう全てが遅い。絶望感の中、神楽耶も散った…。

皇神楽耶、死亡。

 

 ゼロ様…未熟な私を…お許し下さいませ…何も役に立てない私を。

 如何して今まで気付かなかったのだろう…従兄弟の抱え持つ深い闇を。

 だけど、もう全ては遅いのですね…貴方の最後の計画の破綻因子が、まさか私の親族だとは。

 キョウトの血は…やはり淀んでいたのですね…。

 

「神楽耶……俺は、何処で間違ったんだ?」

 

そしてゼロの銃口が、扇へと向けられる。

隠れ潜んでいたヴィレッタは動揺を隠せず、飛び出した。

早く行かなければ…あの人が死んで…殺されてしまうと。

コーネリアの制止を振り切って隠れ場所から外に出た時、非情の音が鳴り響いた。

驚愕の顔を残した己の愛する男の…最後の姿を。

その額を撃ち抜かれて大きく眼を開けたまま、扇要は死んだ。

ヴィレッタは…その場に座り込むしか出来なかった。

 

 千草…俺は…お前と…生まれてくる子供と…生きたかった…俺の望みは…其れだけだったんだ。

 ゼロは…やはり悪魔だったな…。恐らくは…枢木…スザク…か…畜生…俺の…千草…。

 

「……扇もか」

 

普通であればヴィレッタは、すぐに発見されて拘束されたに相違ない。

だが…あまりの出来事に、そこに居る全ての思考が停止状態だった。

時間が停止した…かに思える矢先、ゼロは素早く動きシュナイゼルに向った。

そして…その剣は、磔のままに呆然とゼロを見つめていた彼を襲った。

ゼロに従えというギアスの命じるままに、穏やかな表情を称えて。

そして…そのまま、彼の意識は消え去った。彼の頭が…胴体と分かたれたと気付かずに……。

シュナイゼル・エル・ブリタニア…斬首処刑により死亡。

 

「あ、義兄上……」

 

ゼロが、十字架の前でジャンプすると、そのまま剣を横に薙いだ。

その剣の先には、シュナイゼルの首…其の物があった。

そしてシュナイゼルの首が地に墜ち、鮮血が辺りに塗れ…血の匂いが漂う。

其れに気付いた群集から、その事実に気付いて次々に悲鳴が上がる。

だが、それは一時に過ぎなかった。まだ終わってないと…誰もが気付いたからに相違なかった。

ゼロは、全てを滅ぼしに来たのでは無いのか?

まだ希望に縋りたかった群集心理を、誰が責められようか?

しかし…そうではなかったのだ。その刃は、悪意の塊だという真実を認めたくなかったのだと。

 

そして…ようやくルルーシュは、正気を取り戻した。

余りにもイレギュラーな事態の連続ではあったが、やっとスザクが変だと認識したのだ。

そのままナナリーに迫るゼロに向って、彼は叫んだ。

それが事態を動かす事を…ゼロレクイエムの終焉を告げると判っていて。

懐に潜めた銃を抜き、ゼロに向って銃を撃ち放つ…妹を助けようとして。

 

「や、止めろぉっ、スザクゥッ!!」

「ちいっ!」

 

ルルーシュの銃撃がゼロの仮面に当るも、その剣先はナナリーをも貫いた。

そして仮面が真っ二つに割れ、そこから現れた素顔は……ダモクレス戦役で死んだ筈の枢木スザクその人だった。

その顔は狂気に歪み、悪しき笑みを湛えていた。その素顔を見て…ナナリーは刺された痛みよりも、驚愕が強かった。

 

「あ〜あ、バレちまったか。まあ良いや…とっととクタバレ、ナナリー無能皇女殿下…クハハハ」

「スザク…さん…何故…私を…殺すのですか?(ガクッ)」

 

ナナリーは信じられない表情をしながら…眼を閉じ、息を引き取った。

全てに弄ばれた皇女ナナリーは、悲劇の死を遂げた。

ナナリー・ヴィ・ブリタニア、余りにも薄幸の短い生涯であった。

 

「ふん…まあユフィの仇って事にしとくよ…ナナリー。ルルーシュの妹だって事を、その生まれの不幸を呪うがいいさ」

「スザク…此れでユフィの仇は、取れたとでも…お前は言うのか?

 ジェレミアを騙まし討ちにして斬殺したのは…何故だ?

 黒の騎士団の幹部全員…黎星刻、ジノ、アーニャ…天子まで。

 シュナイゼルは、ともかく…何故…ナナリーまで…殺したんだぁ?」

「違うね…ずっと僕は、君が憎かったんだよ。

 君がゼロであった頃から、ずっとね…このブリキ野郎がっ!

 何で僕が、憎悪の対象なゼロなんか演じなければいけないんだ?

 フザケないでよ…僕ほどゼロを恨んでる者はいないんだからね。

 でなければ、君を…ゼロを皇帝に売って、ラウンズの地位なんか求めるものか」

「「「「「「「な???」」」」」」」

 

これは全世界同時中継であっただけに、世界中がどよめいた。

それだけ、ゼロの仮面を取ったスザクの言葉は余りにも衝撃的だった。

英雄ゼロの正体が、悪逆皇帝たるルルーシュだったとは?

 しかもゼロを売ったのが、噂通り枢木スザクであったと…。

スザクは壊れたレコードの様に演説を続ける…まるで狂ったかの様に。

 

「僕こそが英雄になる筈だった…僕は、枢木の嫡子だよ? 日本を…やがては世界を統べる事が約束されていたんだ。

 あのブリタニアの暴挙さえなければ…ね。中華連邦の天子は、僕と結婚する事も決まっていた。

 だが…君が日本に来た事で、それも消えてしまった。父ゲンブがブリタニアと裏取引して中華連邦を袖にしたからね」

「な、何だと?」

「さて…と、そろそろ時間だ」

「何の事だ?」

 

ズガ〜ン!

その時、大きな爆発が起こった。

その方向を見て、ルルーシュは愕然とする…あの位置にあるのは…まさか? 

 

「爆発だと?」

「ククク…今から制裁の開始だよっ!」

「なっ?…ぐわああああああああ……」

 

それに驚く彼の目の前に、何時の間に移動したのだろうか?

スザクが立っていた…そのままルルーシュの両脚を剣で切断して。

その衝撃で、持っていた銃を落とすルルーシュは、そのままバランスを崩して倒れ伏した。

両脚からは大量の出血…早く手当てをしないと助かるまい。だが驚愕が、ルルーシュから痛みへの意識を奪っていた。

 

 な、何故だ?…スザクが…俺を?

 

「気付いたかい、ルルーシュ?

 あの爆発の中に居るのはニーナやロイドさん達だよ。

 ああ…超合集国の首脳連中も全員が同じところだったっけ。全員が、あの世行きだよ」

「ス、スザク…お前っ??」

「別に良いじゃないか…君も、もうすぐ出血多量で死ぬんだよ?

 皆の後を追わせてあげるよ…悪逆皇帝の末路には何とも相応しいじゃないか」

「ニーナ…ロイド…セシル…咲世子…ラクシャータ……みんな済まない…俺が愚かだった」

 

ニーナ・アインシュタイン、ロイド・アスプルンド、セシル・クルーミー、篠崎咲世子、ラクシャータ・チャウラー死亡。

 

この時、悲痛な悲鳴が響き渡る…それはリヴァルとミレイであった。

この状況下に、とても見て居れなくなったのだ。スザクの残虐行為が、とても信じられなかったのだが……。

あの優しいスザクは、何処へ行ってしまったというのか? それとも、これが本性だったというのか? 

このままではルルーシュも出血多量で死んでしまう。

ルルーシュが大事な二人にとって、我慢出来ない事態だった。

二人に取っては、スザクより遥かにルルーシュが大切なのだから。

思わず現場へと駆け寄る二人…だが、冷酷にスザクは見つめるだけ。

そして…悪魔の銃口を向けた…まずリヴァルに。

 

「スザク、止めろおおおっ!」

「スザク君、止めてえええええええっ!」

「く、来るな…リヴァル…ミレイっ! スザク、止めろっ!…止めるんだああああああああっ!」

 

ルルーシュの悲痛な叫びの中、冷たい眼で引き金を引くスザク。

リヴァル…其れに続いてミレイも、ゆっくりとその場に倒れた。鮮血を、その場に満たして…。

 

 今ので判ったよ、ルルーシュ…全部、芝居だったんだな。

 ルルーシュ…如何して、俺に何も教えてくれなかったんだよ。

 水臭えじゃねえか…判ってるよ…お前は、俺を巻き込みたく無かったんだよな?

 畜生…スザク…何でだよ? お前は、ルルーシュの親友だったんじゃねえのかよお?

 …全部が…ウソだったなんてさ…外道も良いトコだ。お前…酷すぎるよ…余りにもルルーシュが…可哀想じゃねえかあ…。

 

 ルルーシュ…こんな事になるんだったら、正直に告白しとくんだったかな。

 ずっと前から貴方を愛してましたって…もう遅すぎるけど。

 シャーリー…私も今から、そっちに…逝く…からね?

 あ〜あ…まさか、スザク君に殺されるなんて思ってもみなかったなあ…。

 

狂笑するスザク…まさに悪魔の形相だった。

リヴァル・カルデモンド、ミレイ・アッシュフォード…死亡。

 

「そ、そんな…リヴァル…ミレイまで何故殺したんだ…スザクッ!!」

「良かったねえ、ルルーシュ。また、君の冥土の連れが出来たじゃないか」

「スザクぅぅぅぅっ!」

 

「ああ…断っておくけど、実は僕って二重人格だったりするんだ」

「な、何?」

「聖人君子じゃないけどさ、良い子ぶるのってストレス溜まるんだよね。

 そして何時の間にか…もう一つの人格が出来ちゃったんだ。狂気に満ちた…もう一人の僕がね。

 枢木の一族って、近親結婚ばっかでねえ…人格破綻者って多いのさ。

 僕にも、その濃い狂った血が流れてたって事さ…あはははは。

 ユフィも愚かだったからねえ…ただのバカだったよね。利用されてるのにも気付かずにさ…世間知らずの皇女だったね」

「な…お前…ユフィまで利用してたというのか?」

「当たり前じゃないの…あんな能天気皇女に何が出来るのさ?

 行政特区案も、こっそり僕が彼女に吹き込んでたんだよ。

 シュナイゼルから密命を受けてたからね…簡単に踊ってくれたよ」

「シュナイゼル…からだと?」

「あれも本当に面白い茶番劇だったよね〜。ああ、ロイドさんやセシルさんなんかは知らない事だよ。

 僕はシュナイゼルの密偵だったからさ…アイツなんか鬱陶しかったけど。

 やっと軛が取れてホッとしたよ…もう殺したくて仕方が無かったもの。

 僕に命令するなんてねえ…何とも身の程知らずな屑だったよね。

 そうそう、彼女もイレヴンに殺されるって見せ掛けろってのもあった。

 上手くユフィが、君に殺されてくれて助かったよ…。ホントに僕の手間が省けて楽になったのさ、うんうん」

 

 そんな…あの惨劇が、全て仕組まれてたというのか?

 ユフィ…俺が手を下さなくても、お前はスザクに殺されていたのか?

 シュナイゼル…お前が、其処までしていたというのか?

 

「お前…こんな事をして、ただで済むとでも思っているのか?」

「さて、如何なるんだろうねえ〜? 僕一人だったら、如何にでも生き抜く自信ってあるんだよね。

 でもね…別に死んでも構わないんだよ。僕は、君なんかを人質になんかするつもりは端から無いから」

「如何いう…意味だ?」

「決まってるじゃない…君を嬲り殺す為に遣って来たのさ。ゼロレクイエムの無残な失敗を胸に、悔いるが良い。

 まあ…その状態だったら、もう助からないだろうけどね…アハハハハ」

 

高笑うスザクに、ゆっくりと迫る影があった。そして…憎悪の剣が、スザクの背後を襲った。

愛する男を奪われたヴィレッタの復讐の剣先が…だが?

せせら笑いながら剣を弾き、弄ぶスザクの歪んだ顔。

 

「あのねえ…ヴィレッタ、君程度の腕で僕と戦えるとでも思ってるの?

 不意を付いたつもりだろうけどさ…殺気がミエミエだったよ。

 あんなのじゃ、仮にもナイトオブゼロと呼ばれた男に勝てる筈ないさ。

 動くのが面倒だったから待ってただけなのにねえ?…ククク…ハハハハ」

「き、貴様…何故、扇を殺したんだあ?」

「あらら…君ってブリタニアの男爵なのに、屑イレヴンに惚れてたの?

 ナンバーズって見下してた純血派が、何とも堕ちたもんだ…呆れるよ」

「人を…愛するのに…人種など関係あるものかあっ!」

 

剣で突きに掛かるヴィレッタを避けつつ、彼女を斬るスザクの刃。

だが…その刃は斬り切れずに、抜けなかった。彼女が、その刃をムリヤリに身体で止め置いたのだ。

これは…ヴィレッタの執念の生んだ奇跡だった。

 

「な?」

「ごほ…今です…コーネリア様っ!…ギルフォード卿っ!」

「済まぬっ…ヴィレッタ卿っ!!!」

「天誅っ!奸賊枢木っ!!」

「ゴフッ…く、まさか…コーネリアとギルフォードが生きてたなんて?」

 

剣が抜けなくなった矢先に、下方から突き出される二本の刃。

スザクは、それを避けられなかった…気配を感じ取れなかったからである。

二人は殺気を消し、二人の居る壇上の下まで移動して潜んでいたのだ。

二本の剣がスザクを下から貫いた…致命傷だった。生きろのギアスが作動しようと…もはや手遅れな傷であった。

 

「裏切りの騎士よ…貴様の思い通りになど断じてさせんっ! ルルーシュが、どんな思いでゼロレクイエムを…どんなっ!」

「チッ…あ〜あ、こりゃ致命傷だな。

 まさか機情のヴィレッタにギルフォード、コーネリアまで生きてたなんて…僕の誤算だった…

 そうか…ルルーシュが匿っていたのか…後々の為に。

 あれから僕は、隠れてるしか出来無かったから知らなかった。

 まあ…良いさ、僕が支配出来ない世界なんて、そんなものは無意味だ。

 神楽耶も…天子も…シュナイゼルも、そしてナナリーも死んだ。

 そしてルルーシュが死ねば、また世界は昏迷に戻る。

 ダモクレスとフレイヤがあったら簡単だったのに…勝手に処分しやがって。

 あれがあれば、僕が支配者になれたんだ…このブリキ野郎…最後まで格好ばっかつけやがって。

 こんな世界…とっとと滅べば良いんだよ…何が優しい世界だ…ゴフ(ガクッ)」

 

コーネリアとギルフォードの剣がスザクから引き抜かれ…彼は死んだ。

最後まで主君を裏切り続けた狂気の男の、裏切りの騎士の末路だった。

ギルフォードは倒れたヴィレッタを抱き抱える…

しかし、最早手遅れだった。

 

「ヴィレッタ卿、気を確かに(くっ、致命傷か…長くは保つまい)」

「ギルフォード…卿…枢木め…は?」

「死んだ…卿のおかげだ」

「そうですか…要さん…貴方の仇は…私も、子供と…貴方のところへ…」

「ヴィレッタ卿っ!!」

 

数奇な運命に弄ばれたヴィレッタ・ヌゥ。

愛する扇要がスザクに銃殺された少し後に彼女も、その波乱の生涯を終えた…。

 

そして悪逆皇帝として、その命を終える筈だった男にも最後の時が近付いていた。

その場は、ルルーシュ、ヴィレッタ、そしてスザクの鮮血に塗れていた。

コーネリアは…最後に残った義弟を…優しく抱き締めた。

こんな結末を迎えるのでは無かった筈なのに…。

コーネリアとギルフォードは…今、必死に涙を堪えていた。

ルルーシュに後を託された…1ヶ月前の、あの日の事を思い出しながら……。

 

まだ身体が治りきっておらず、蓬莱島に迫る追っ手から逃げた二人。

だが所詮は多勢に無勢、追い詰められジェレミアの手で捕らえられた。

そして、秘密裏に皇帝直轄領となった日本に護送されていた。

二人に対する扱いは実に丁重なものであったが、それも反感に拍車を掛けた。

そして…二人の前にルルーシュが姿を見せたのだった。

コーネリアは怒りの眼を向けつつ、ルルーシュに唾を吐き付ける。

だが…ルルーシュは人払いをさせると、二人の拘束を解いた。

 

「何の真似だ…ルルーシュ、さっさと私を殺すが良い。情けなど不要っ!」

「俺を憎むのはムリも有りません…何しろ俺はユフィの仇ですからね」

「貴様っ! 其れが判っているのなら、何故ユフィを殺したのだっ!?」

「義姉上に信じて戴こうとは思いませんが、事実だけを述べます。

 あの時、ユフィの説得に負けた俺は…協力しようとしていた。

 その時…ギアスが暴走し、冗談で言った言葉がユフィを狂わせてしまった」

「ギアスが暴走した…だと?」

「ギアスは使えば使う程、身体に負担を掛け…何時か暴走してしまう魔性の力。

 徒手空拳でしか無かった俺は、ギアスという力に縋ったのかもしれない。

 アレが無ければ、俺はシンジュクゲットーで殺されてましたからね」

「シンジュク?」

「クロヴィス義兄さんの親衛隊にね…テロリストとして。

 ただ偶然に、奴等の探していた不老不死の女と出会っただけなのに。

 証拠隠滅の為にね…俺は、ギアスの力に縋るしか生き延びる道は無かったのです」

「まさか…CODE-Rの事か?」

「義姉上は御存知でしたか…そういえばギアス嚮団本部で逢いましたから当然か」

「不老不死の研究…クロヴィスが行っていた悪魔の所業だな」

「イレヴンを皆殺しになどというギアスの命令に従って、ユフィは暴走した。

 それを止めるに他に手立てが残されては…あれは俺に取って最大の悔恨です」

 

「それで…私に何が言いたい?」

「母マリアンヌの死の真相を知る為とはいえ、御二人には迷惑を掛けました。

 ギルフォード卿に反逆の汚名を着せてしまったのも、俺のギアス。

 あの時の俺は、ナナリーの事しか頭に無かったですからね…必死でしたよ。

 本当に申し訳無かった…ですから俺は、全ての悪業を背負う決意をしました」

「ルルーシュ様…一体?」

「悪業を背負う…だと?」

「ええ…ゼロレクイエムで」

「何だ…それは?」

 

ゼロレクイエムの詳細を二人に話し始めたルルーシュ。

話が進む毎にギルフォードは沈痛な面持ちを隠せず、そしてコーネリアは激怒した。

 

「お、お前はバカかあっ!?」

「判って下さい義姉上…此れは俺の背負った贖罪なんです。

 ユフィを…親しい友人を、弟を死なせてしまった俺の罪を償わなければ」

「弟だと?…貴様には、そんな者など…」

「血は繋がっていない偽りの弟であろうとも、俺を救う為に命を投げ出したロロ。

 ロロもギアスに拠って弄ばれた悲劇の子だった…ギアスなど世界には不要です。

 俺は、弱い者達への優しい明日が欲しい…その為に、俺は最後の犠牲になる。

 ギアスという魔性の力を持つのは、既に俺一人しか残っていません。

 此れを葬りさるためにも…ゼロレクイエムは絶対に必要なんです!

 如何か俺に、協力して下さい…義姉上、御願いします」

「だ、だが…その為に、そんな情報操作をしてまで、悪逆皇帝の仮面を被ると?

 そしてゼロに…枢木に殺される為に、そんな計画を協力して欲しいと言うのか?」

「ユフィが望んだ夢…平和な世界を実現する…俺はアイツの夢を適えて遣りたい…」

「くっ…ユフィ」

「そしてナナリーが望んだ優しい世界を…もう決めた事なんです。

 弱者には、悪逆な独裁者など不要なんですよ…俺が全ての罪を背負います」

「ルルーシュ、お前…」

 

コーネリアは絶句し、もうルルーシュを止められないと悟った。

ルルーシュの眼から流れ落ちる血涙を見た時、魂が悲鳴を上げていると判ったからだ。

その後、歩んできたルルーシュの人生を聞き…最早、止める言葉など無かった。

コーネリアはルルーシュの頼みを受け入れ、ゼロレクイエムに協力すると約した。

 

 済まない…ユフィ、私には最早ルルーシュを止められん。

 お前だったら、ルルーシュを止められたのか?

 ルルーシュも、お前も…ギアスに翻弄された人生だったのだな……。

 

全ての計画の段取りを確認すると、用意された隠れ家に移って時を待った。

茶番劇の幕が上がる…その日まで。

秘密裏に情報操作で集められた黒の騎士団の残党達と共に。

 

「ギルフォード…私は、本当に此れで良いとは思えん」

「姫様…」

「だがな…ずっとルルーシュは、塗炭の苦しみを味わい続けてきた人生だった。

 記憶を改竄されて虜囚の生活まで強いられていたとは、私にも予想外だったが…」

「ブリタニア皇族とは…業の深い一族なのかもしれません」

「そうだな…文字通り、血の歴史だからムリも無いか。

 もう止められないのであれば、私は見届けるだけだ…ルルーシュの決意をな」

「………哀しい決意ですね」

「此れ程までに私は、自分の非力を呪った事は無いぞ…ルルーシュ」

 

そして運命の日、枢木という悪鬼のイレギュラーに拠ってゼロレクイエムは破綻した。

殺戮を繰り広げるゼロを止め様とするも、化け物めいた能力の上に磔の人質達。

周辺には一般の群集が多数…巻き込む危険性が高い。

しかもルルーシュは、スザクの手で両足を切断されてしまい、動く事も適わぬ状態。

コーネリアには為す術も無く、ヴィレッタの命懸けの奇跡でスザクの隙を付くも…

時は既に遅く…全てが終った後、彼の死に目を看取る事しか出来なかった……。

 

「義姉上…」

「ルルーシュ…済まない…託されたというのに結局、私は…何も出来なかったな。

 ゼロレクイエムは…失敗だったぞ。あの外道に任せたのが全ての過ちなのに、其れを気付けなかった我が不明を呪う」

「良いんです、義姉上…如何せ、俺は…死ぬ筈の身です。

 俺は…スザクの闇に気付けなかった…ユフィ…お前も利用されてたのか。

 もっと早く気付いてたら…あんな…事には…為らなかったかもしれない。

 ニーナ…ミレイ…リヴァル…カレン…ナナリー……皆、済まない」

「ルルーシュ…」

「義姉上…重荷ばかりを残して…申し訳ありませんが…後を…頼みます」

「……判った…私に出来るだけの事をすると約束しよう」

「何処で…道を間違ったのでしょうね…俺は?

 最後の最後まで…俺は、裏切られた一生だった…。

 ですが…最後を看取ってくれたのが…義姉上で良かった…知って…ましたか?

 俺は…幼い頃から一番、コー姉が…コーネリア義姉上が好きでしたよ……」

「それは…惜しい事を…したな…皇后に為り損なったでは無いか(涙)」

「そうです…ね…もし生まれ変われるなら…今度は平凡な人生が……(ガクッ)」

「…ルルーシュ…ルルーシュ…ルルーシュッ!!!!(号泣)」

「…姫様…」

 

ルルーシュの波乱の生涯は、ここに幕を閉じた。

主君であるコーネリアを、痛ましい眼で見る騎士ギルフォード。

コーネリアの腕の中で…両脚を失い、出血多量でルルーシュは息を引き取った。

彼を抱き締めながら、地獄を見続けてきた義弟の無念を悼むコーネリア。

その映像は、世界中の涙を誘った。

 

神聖ブリタニア帝国・第99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア暗殺。

後に「トウキョウの惨劇」とされたが…これで惨劇が終わりではなかった。

その後に一層の悲劇が待ち受けているなどと、死んだルルーシュに判る筈も無かった。

 

そして動揺が覚めやらぬ中、コーネリアからゼロレクイエムの全貌が明かされた。

ゼロの正体がルルーシュであった事…そして、その悲劇の生涯。

ギアスの事は、とても明かせる内容で無かった為に伏せられた。

もっとも、それを詳しく知る者はコーネリアとギルフォードのみだった。

それを知る他の者は、殆どがスザクによって殺されてしまっていたからである。

唯一人を除いては…それが後の悲劇を生む事になった……。

実質に一般民衆は圧政されて無く、全てはマスコミなどの情報操作に拠る事が判った。

 

スザクの為に、囚われていた多くの政治家達も一緒に虐殺されてしまったが…

既にブリタニアが世界統一している現在、ルルーシュの残していた法案等もあった。

現状ではブリタニア中心での世界統一国家を維持するのが妥当と判断された。

それ程までに、スザクによって殺された各国首脳の数が多すぎたのである。

 

ブリタニアで唯一残った皇族のコーネリアが、第100代女帝に民意で選出される。

彼女がリーダーシップを取る事で徐々に混乱は収束するかに思えた頃…世界を悲劇が襲った。

そして世界は呆気なく滅びの道を歩んだ…余りにも強制的に。

世界に絶望の鎮魂歌が響き渡った…全ての終焉の歌が。

 

 俺は…闇の中に堕ちて行った。 確かにスザクのせいで、ゼロレクイエムは失敗した。

 だが…コーネリアだけでも残っていれば、まだ可能性はある。

 俺がゼロだと…知られたとしても…それが甘かったとも知らずに。

 それは…闇の中から聞こえてきた…この声、何処かで聞いた様な?

 

『残念だけどね、ルルーシュ…あの後、少しして世界は滅んだのなの』

「えっ…だ、誰だ?」

『ダモクレスにあったのが最後のフレイヤでは無かったの。

 シュナイゼルの副官…カノン、彼が隠匿していたのよ。

 自分が死ぬ時、起爆装置のタイマーを作動させる様に仕込んで…ね。

 フレイヤ数発程度じゃ、そこまでムリだったんだけど…。 

 仕掛けた場所が世界中の火山帯だったのよね…世界的に大噴火。

 噴煙が世界を覆っちゃって…氷河期で人類は死滅しちゃった。

 そこまで計算してたみたいなの…で、準備を整えて後追い自殺しちゃったの』

「だが…何故だ? カノンにはギアスを…まさか?」

『そう…シュナイゼルが、あのウザクに斬殺されちゃったでしょ?

 その時、ギアスが解けたみたいだよ…で、ウザクは死んでるでしょ?

 それを殺したコーネリア諸共に心中しちゃった訳…何とも傍迷惑な話よねえ』

「そう…だったのか」

 

『でね?…色んな意味で困るのよねえ。貴方が死んだから…それで、やって欲しい事があるのよ』

「如何いう事だ?」

『冥王計画…此れを、遣って欲しいのよ』

「冥王計画? 何だ…其れは?」

『元々、貴方がしてたんだけどねえ…何の弾みか忘れちゃってたの。ああ、そうそう…私の名は、天王…天王なのはよ』

「天王…なのは?…何処かで聞いた様な…」『何れ思い出すでしょうね〜…じゃあ、また過去で逢いましょうね』

「か、過去だと?」

『そ〜、このままじゃ何かと都合も悪いしね。 上手く立ち回って計画を進めて…今度こそ貴方が…冥王よ』

「冥…王?…何だ……それは?」

『真の貴方が目覚めた時が楽しみなの。まったね〜?』

「ま、待て…天王。うわああああああああああああ?」

 

 俺は、闇の奥底に堕ちていく感覚を覚えていた。

 一体『冥王計画』とは何の事だ?

 天王とは何者なんだ…過去へ戻れだと?…そんな事が可能だと言うのか?

 

 俺は意識が薄れながら、厄介な事に巻き込まれたのを実感していた。

 そして…どれくらい気を失っていたのだろう? 気付くと、夕陽が沈みかかってるのが判った。

 妙に見覚えのある風景…そう、俺は此処が何処だか知っていた。

 

「此処は…一体、何処だ?」

 

 ふと俺は気付いた…ここはアッシュフォード学園の屋上だって事に。 

 だが俺は死んだ筈なのに…まさか本当に天王の言った通り、本当に過去へ戻った?

 携帯を確認すると…日時はブラックリベリオンの半年後だった。

 皇暦2018年10月10日…か。となると、俺は記憶改竄されてエリア11に戻されたという事だな。

 追々と記憶は、はっきりとするだろうが…だが。

 

「何故、俺を過去に戻したんだ…天王。また俺に…あの過酷な道を歩めと…言うのか?

 ギアスのコントロールは完全に出来る様になったんだな。

 もうコンタクトは必要無くなった訳か…まあ手にいれるのも難しいがな」

 

 自分のギアスの限界、その現状は何故か把握出来ていた。

 近くに誰も居ない事を確認すると、俺はギアスを確認した。

 両眼ともオンオフも問題無い様だ…如何やらギアス完全体のままだな。

 俺が視認出来れば、俺を直接に見ていなくても強制的に効果発動か。

 相手の視界に入ってさえいれば有効範囲は100m程度だった筈だが…ちょっと待て、範囲が1キロだと?…全く、俺はバケモノだな。

 

 しかしだ…これから如何する?

 前と全く同じだとしたら黒の騎士団は…扇や藤堂は囚われの身だ。

 そして、アイツ等は日本解放しか無いと判っている。今更、アイツ等を駒にしたところで大した役には立つまい。

 どうせ裏切られるだけだと判りきってるしな…ギアスを掛ける価値も無い。

 ナナリーにせよ、敵になるのは必至だ。傍にスザクが居る以上、問題はラウンズもだな。

 ダモクレスも、ニーナのフレイヤにしても。

 

 何とも厄介事が多すぎる…其れに今の俺は、何の為に戦えばいい?

 母さんの殺された真実も知ってしまった以上、少し腑抜けたかもな。

 ナナリーも一人で歩ける事を知った以上、干渉しすぎても意味が無い。

 だがスザク…アイツを何とかしないとダメだろうな。今の俺の力はギアスだけ…か。

 ん?…妙だな…そんな筈は無いと思えるのは何故だ?

 

 そういえば天王のヤツが言ってたな…何か『冥王計画』とか言ってたが…一体、何の事だ?

 ん?…誰か居るな…何者だ? 何処かで逢った事がある様な気がして為らない…だが何処で?

 

物思いに耽るルルーシュ。

其処へ、アッシュフォードの制服を着たメガネを掛けた少し大人っぽい女性が、ゆっくりとルルーシュに近づいて来た。

知らない筈だ…なのに見覚えのある妙な既視感があった。

 

「お前は…誰だ?」

「一応、初めまして〜ですかね。私はクアットロと申します〜、ルルーシュ様」

「4番?…また変わった名前だな…だが、何処かで聞いた様な?」

「あは…少しでも覚えてくれてるのは嬉しいですぅ〜。貴方に逢わせたい方がいらっしゃいますから、御同行願えないですか〜?」

「という事は、今の俺の状況を知ってる…そうなんだな。ふ…今の俺は、如何でも良い…構わん、何処でも連れて行け」

「では、私を信用してくださる…と?」

「妙な話だが、お前は俺の敵だと思えないんでな?」

「有難うございます〜…では、こちらへドウゾ〜」

 

 俺はクアットロの後に着いて行った。そして、すぐ変である事に気付いた。

 この時期の俺は、機密情報局の監視下にある筈だ。なのに、それらしき者の気配が無い。

 観察しても、それらしき監視システムが感じ取れない。それほど巧妙に?

 いや…前回は、全て認識出来るレベルだった。これは如何いう事なんだ? 

 

「ああ、監視が気になるんですね〜。観察がシビアですから、普通の人なら判らないレベルなのは流石です〜。

 実は私が、全ての監視は誤魔化してますよ〜。機情の連中は、私の誤情報で騙されてます〜…うふふ」

「何?」

「私って面白い力があったりするんですよね〜。追々と説明しますけど、ルルーシュ様のお役に立てるって自負してます」

「俺の…役に立つだと?」

「はい〜」

 

 変わったヤツだ…しかしクアットロか。妙に安心感があるんだが、この女を俺は知ってると言うのか? 

 俺は、学園外の裏手にある丘に向ってるのに気付いた。誰が、俺を待ってるのか…ひょっとしてアレは?

 そして丘を下から見上げると、そこに一人の女性が立っていた。俺は、目を疑った…其れも当然の事だ。

 本国から行方不明と先日報道されていた記憶のある女性だったからだ。

 それは…俺の良く知ってる人間だったのだから……。

 

「ま、まさか…コーネリア…義姉上…なのですか?」

「ああ、そうだ…此処は久しぶりと言うべきなのかな、ルルーシュ?」

「義姉上…俺を殺すために、此処へ呼び出したとでも?」

「違うな…ユフィの事は、既に私に取って過去の話だ。今の私には、もう如何でも良い…私も、舞い戻った口なのでな?」

「えっ…?」

「ゼロ…レクイエムと言えば、お前にも判るだろう?」

「本当に…あの時の義姉上も…過去へ戻って来たのですか?」

「まあ、それだけじゃないんだがな。ああ…そうだった。これからは、お前を冥王と呼んだ方が良いのかな?」

「なっ?」

 

夕陽を浴びながら穏やかな表情を浮かべるコーネリア。彼女は、何を知っているのか?

ルルーシュを冥王と呼ぶコーネリアの真意は? そして…冥王とは、果たして何を意味しているのか?

ルルーシュの頭の中は、この急展開で大きく千路に乱れていた………。

 

 

 

Next Turn『 鉄甲龍の胎動 〜 Quickening of How Dragon 』

俺は過去へと戻ってしまった…ゼロレクイエムの失敗は、俺の罪過かもしれん。

だが義姉上まで過去に戻っているとは、全く予想外のイレギュラーだ。

天王とか言ってたが、まだヤツの目的は何も判っていない。

俺は、何の為に生きるのか…それを見つけなければ為らない。明日が欲しいと願う事が、今度は俺に許されるのだろうか?

 

 

後書き

今作は元々HPでリクエストが有って、最初は3話ほどの短編予定でした。

「ゼロレクイエム後、死んだルルーシュが過去へ逆行」というテーマで。出来れば「DesireStrikerS」のR2版でという話だったかな?

そこで、ふと思い付いたのが「ゼロレクイエム失敗の描写」でした。もし、あの時にこうなったら?という妄想からきてます。

実際「DesirStrikerS R1」のR2ver.って、以前は全く考えて無かったです。

何故かと申しますと、まだ未完という事も有りますが元々のR1設定自体がR2の世界観とは、かなり異なるからです。

R2の…しかもゼロレクイエム後となると、如何しても完全に別の話に為らざるを得ないというのが、書き始めた時の結論です。

しかし何で私が書くと、スザクって外道化しかしないのか?(苦笑) 多分、アンチ駄文ばかり書いていた為なんでしょう…きっと。

まだ甘いってHPでも意見が有りましたが、此の話では少しだけ?外道スザクです。

邪悪なスザクって、実は書いてて意外に面白かったりしますけれどね。

 

09.05.06初稿up

12.11.08加筆改稿版up

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