*注意 

この短編は、コードギアスR2第19話から終盤に掛けての捏造設定です。それを充分に踏まえたうえで、お読み下さい。

シュナイゼルの断罪っぽい話ですが、実際は少し違う気もしてたりします。ごくありふれた設定ではありますが、楽しんで戴ければ幸いです。

 

 

 

 

激戦が続く第2次トウキョウ決戦は、ナイトオブセブンの為に意外な形で終焉を迎えた。

ナイトオブセブン、枢木スザクのランスロットから放たれたフレイヤの一撃で。

たった一発のフレイヤの破壊力の凄まじさは、双方の戦意喪失には余りにも充分であった。

両軍共に眼下に有る現実の光景が信じられず、ただ呆然とする他は無かったのである。

 

ルルーシュも、カレンも、撃ったスザクですらも、この余りの惨劇に言葉を失っていたのだ。

事実上トウキョウ租界は壊滅し、ブリタニアと黒の騎士団は休戦状態に陥った。

その光景を唯一人、笑みを浮かべながら眺めている人物がいた。

まるで全ては自分の思惑通りと言わんばかりに…。

 

 さて…と、そろそろチェックメイトといこうか?

 やはり君は全てに裏切られる運命に有る様だ…何とも哀れなものだね。

 フレイヤの威力も予測通りの結果だね…見事なまでにトウキョウ租界を消滅させた。

 現状では最強の矛を私は手に入れたし、全ては私の脚本通りに進んでいる。

 

 ナナリー確保の部隊から連絡が途絶えたのが気掛かりだけど、あの爆発に巻き込まれたかな?

 それなら別に駒が一つ減っただけだし、他に遣り様も有るさ。

 もしナナリーが死んだのなら、余計にルルーシュが冷静で有ろう筈も無い。

 所詮、君は道化でしか無いのだからね…ふふふふふ。

 

 

「 ギアス真世界 」 短編 『 愚者達の円舞曲 〜 A Waltz of Fools 〜 』(加筆改稿版)

 

 

ブリタニア、黒の騎士団が両軍共に暗黙の救出活動が続く最中、ゼロは半狂乱の状況にあった。

妹であるエリア11総督ナナリー・ヴィ・ブリタニアが、消息不明だったからである。

それを押し止めたのは、藤堂とジェレミアであった。

しかしトウキョウ租界がフレイヤによって事実上は消滅してしまった後…

ルルーシュは半狂乱な外見を装いながら、実は内心では呆れ果てていた。

その事実を知る者は、殆どいない…知りえる者は、限られし者のみなのだから。

全ては、脚本家の掌の上で踊る愚者達への手向けの円舞曲にすぎない。

そして脚本は残り僅かへと推移し、遂に終幕の最終楽章が始まろうとしていたのだ。

 

斑鳩に帰還したゼロことルルーシュは、総司令室こと自室に閉じ籠もってしまった。

中から鍵を掛けて…中に居るのは記憶喪失状態の C.C.(シーツー)のみだった。

心配そうな表情を隠せない斑鳩のクルーだったが、そこへ意外な来訪者が現れる。

それが、これから起こる波乱の始まりでもあった。

 

 まさか、こんな真似を仕出かすとは流石に驚愕モノだったな。

 となれば、ヤツが企むとすれば恐らくアレをするつもりだろう。

 こちらも少し準備しておく必要が有りそうだ。

 かなりシナリオが変わるが、それも止む無しだろうな………。

 

 まあ物事にイレギュラーは付き物だが、全く枢木のヤツもムチャをするものだ。

 まさかナナリーごと3千5百万人を惨殺とはアイツにも恐れ入ったな。

 参ったな…残念な事だが、ナナリーの死亡反応が確認出来たか。

 ヤツにしろ自分サイドに確保しようとして間に合わなかったのは誤算だったろうが……。

 

 トウキョウ租界は壊滅してしまったし、アッシュフォード学園も爆発に巻き込まれて跡形も無い。

 あの二人も死んだ…ミレイ、リヴァル…お前達の死亡反応も確認出来た。

 お前達まで巻き込んでしまって済まなかった。

 

 それにしてもシャーリーの死にしろ、今回は余りにもイレギュラーが多すぎる。

 何故フレイヤ程の破壊力が有る兵器が存在しているのだ? 戦力バランスが崩れすぎだぞ。

 状況の破綻が酷くなるばかりだが、さてヤツが次に打つ手が気掛かりでもある。

 あの悪魔のような頭脳の持ち主は、全てに置いて抜かりが無いからな。

 

 さて…今のままでは手詰まりになりかねん危険性を孕んでいるだけに対応が難しい。

 にしても枢木という男、よくよく愚者なのだな…だが、これから如何するかだ。

 状況次第では非常手段を取るしかあるまい…その前に急ぎ手を打つ必要も有るか。

 

心配そうに見つめるC.C.(シーツー)を、ぼんやり見つめるだけのルルーシュ。

おどおどした C.C.(シーツー)の眼に、一瞬ではあるが輝く知性の光。

そして彼女は、まるで夢遊病者の様にゼロの部屋から立ち去った。

そのままC.C.(シーツー)の姿は、何時の間にか斑鳩から消えてしまったのだった。

彼女がどのようにして斑鳩から消えたのか、知る者は居なかった。

斑鳩から彼女が消えた事が判明するのは、暫く後の事になる。

 

その数刻後、部屋から出て来ないゼロを呼びにカレンが訪れた。

扇達が、急用で第3倉庫まで来て欲しいと言うのだ。

ようやく平静を取り戻したかに見えるルルーシュに付き添うカレン。

二人は直行エレベーターに乗り込むが、何故か無言で見詰め合うだけだった。

エレベータを出ると、いきなりスポットライトを浴びたルルーシュとカレン。

そして二人は、状況が悪い方向へと動いた事を知った。

武器を構えたナイトメアと、多くの銃を構えた扇や藤堂達が待ち構えていたのだ。

 

「扇さんっ! これは一体、何の真似ですっ! ま、まさかクーデター?」

「ち、違うんだ!

 そいつから離れろ、カレンッ! ゼロは、卑劣なペテン師だったんだ。

 彼はルルーシュ、ブリタニアに叛逆した皇子だ。

 俺たちを操り、駒のように利用してただけの卑劣漢でしかなかったんだ」

「よくも我等を謀ってくれたな…ゼロッ!!」

「このペテン師が…貴様の為に、朝比奈は……」

「俺は、お前を親友だって信じてたのによお〜」

 

驚くカレンに必死に説明する扇の姿は、余りにも醜かった。

そして藤堂、千葉、玉城達がゼロを罵っていく。

その異常さに、ルルーシュは上方で見つめるシュナイゼルとカノンの姿に気付いた。

カレンは、ルルーシュを護らんと全身でカバーしつつ、小声で話していた。

 

「はあ、呆れた…コレってウソを上手く真実みたいに吹き込まれたってトコ?」

「多分な…全員が単純だし、アイツ等は日本奪還しか頭に無いからな」

「単細胞ばっかな連中とは思ってたけど、今度ばかりはしくじったわねぇ」

「ふう、全く愚かな事だな。まあ、俺もドジったのも事実だ」

「アレって敵の言う事を、完全に真に受けたってところよね。

 あ〜あ…皆、バッカじゃないの。でも、これからどうするの?」

「カレン…悪いが、お前は残れ。そして最後まで見届けろ」

「やっぱ仕方ないけど、そうなっちゃうか。

 それってメッチャ面倒クサイんだけど、ルルーシュが言うんじゃ仕方ないよね。

 でも何て言うかさあ、アイツ等って何処までバカなんだろ〜ね?」

「ホントにな…何処で、狂ったんだろうな?」

 

絶体絶命な状況下にも関わらず、不可思議な会話を続けるルルーシュとカレン。

殺意を持って、銃を持って上から狙いをつける藤堂や扇達。

彼等の眼は、狂気に歪んでいた。常に被害者意識の塊だからだろうが。

それを見ながら妙に呆れている二人ではあったのだが、何故か全く危機感が感じられない。

果たしてルルーシュは、カレンは何を考えているのだろうか?

ルルーシュを見下ろしながら、シュナイゼルは状況の推移に満足していた。

そこで、ふと妙な違和感に気付いた。コーネリアが近くに居ない事に気付いたのだ。

 

「カノン、コーネリアは如何したのかね?」

「そういえば、先程から姿が見えないですね」

「此処は一応、敵の艦だからねえ…感情的に為って下手な真似はしないと思うけど」

「何しろナンバーズ蔑視が酷い方ですので…探させましょうか?」

「余りウロウロするのも拙いだろうし、最悪の場合は仕方ないだろうね」

「…判りました」

「まあ慌てる事もないだろう。今はショーを堪能しようじゃないか?

 ゼロが…ルルーシュが消えれば黒の騎士団や、超合集国など赤子同然だよ。

 まあ残念だけど、ちょっと私の相手には彼等程度では役不足すぎるしね」

「Yes ! Your Highness !」

 

 しかし妙な予感がするね…ひょっとすると私を裏切る腹かな?

 まあでもコーネリアが私を裏切ったとしても、別に大勢に影響は無いよ。

 どうせ、何れ彼女も始末する予定だったのだからね。

 そうそう…彼女も始末させておく様に指示しておいたし、もう今頃は処理も終わってるだろう。

 

カノンは、シュナイゼルの言葉の裏を汲み取った。

こちらの邪魔になる様ならば、例えコーネリアであろうと始末しろと。

そしてシュナイゼルが始末を命じたのは…まさか?

 

そのコーネリアは、甲板デッキに居た。斑鳩を立ち去ろうとしてるのは明白だった。

小型ヘリに乗り込もうとしてる彼女を追って来たのはヴィレッタだった。

コーネリアが居ない事に気付いた彼女は、艦内を探していたのだ。

 

「コ、コーネリア様…どちらへ?」

「ああ、誰かと思えばヴィレッタだったか。まあ義兄上の腰巾着が、来る筈も無いと思っていたのだが」

「腰巾着?」

「男妾というかシュナイゼル義兄上の小姓だよ、カノンは。

 あの男は、女に興味が無いからな…全く、おぞましい性癖だ」

「シュナイゼル殿下が…男色家?(呆然)」

「ああ…これは喋らない方が、そなたの為だ…皇族でも秘中の秘だからな。

 ともかく私はアヴァロンに行く。これ以上、茶番を見るのも下らないのでな」

「ちゃ、茶番…でございますか?」

「ふふふ、お前に判らないのであれば別に良い。

 だが一言だけ言っておくが、この艦を去るも留まるも地獄だと覚悟せよ」

「そ、それは如何いう意味でございますか?」

「選ぶは、そなた次第だがな? にしても何とも因果な相手を選んだものだ」

「そ、それを…何故?」

 

コーネリアの言葉に呆然自失のヴィレッタ。

そのコーネリアは、彼女を哀しそうに見つめていた。

 

 何とも哀れよな、この女も…そろそろ、コヤツも駒としての役目は終わるか。

 出世に目の色を変え男爵の地位まで上り詰めながら、イレヴン如きに嵌ってしまうとはな?

 全く、あんな軟弱な優柔不断で自己中心妄想男の何処が良いのか、私には理解出来ぬ。

 まあ恋は盲目と申すし、それは私とて変わらぬ男女の摂理でもあるのも事実。

 それを逆手に取るルルーシュの巧緻の恐ろしさだが、今回は裏目に出たようだぞ?

 アヤツも朴念仁だからな…未だに男女の機微が未だに判っておらぬ。

 しかし、それだからこそルルーシュらしいといえば言えるがな。

 

 ふふ…にしても今回は、ホントに変なイレギュラーばかり起こるな。

 流石に、こんな事態までは私も予測していなかったが。

 よもや此の時点でナナリーまで命を起こす事になろうとはな…そろそろ私も退場の頃合かも知れん。

 まあ良い…ともかくアイツに途中まで迎えに来て貰うとするか。

 

甲板で呆然としているヴィレッタを残し、自ら操縦しながらコーネリアのヘリは飛び去った。

一人、斑鳩から離れたコーネリアは、そのまま消息を絶ったのである。

その行方は杳として知れなかった。

既にシュナイゼルが気付いた時には遅かったのである。

ヘリは後日に発見されたものの、彼女の足取りは掴めぬままであった。

 

そしてカレンがルルーシュの傍を離れたところを銃殺しようとした扇達だったが、それも蜃気楼に乗ったロロの乱入で頓挫を余儀なくされた。

気がついた時、蜃気楼ごとルルーシュは、その場から消えてしまったのだ。

呆然とする扇達だったが、急いで後を追った。

しかし…その名の如く蜃気楼の様に消えてしまったのだった。

扇はジェレミアの事を思い出し彼と連絡を取ろうとするが、既に通信が繋がらなかった。

 

その為に扇達は、C.C.(シーツー)からルルーシュの行方を聞き出そうと総司令室になだれ込んだ。

だが当然ながら C.C.(シーツー)の姿も消えており、彼等には手の打ち様も無かった。

ゼロを…ルルーシュを死体として引き渡せず、シュナイゼルが去るのを黙って見送るだけしか出来ない。

シュナイゼルとの日本解放の約束を違える訳にもいかず、自縄自縛に陥る扇達であった。

その際、ディートハルトが彼と一緒に去ったとも気付かずに。

 

丁度その頃、ルルーシュはジェレミアと合流し、ロロを彼に預けていた。

 

「ルルーシュ様、ご無事で何よりでございました」

「心配を掛けて済まんな、ジェレミア。危ないところをロロに助けられたよ」

「兄さんを裏切る奴等なんか許せなかったけど、まずは兄さんの安全が優先だったもの。

 間に合って良かったけど正直、間一髪のタイミングだった。

 今から思うと、ホントに冷や汗ものだったよ…危なかったよね」

「そうだな…ともかくロロ、ジェレミアは予定された場所へ向ってくれ。

 ビスマルクやモニカ達が、グレートブリタニアで二人を待っている。

 俺は、急ぎ神根島に向う。事態がこうなった以上は、俺もシャルルに会わないとな」

「はい、兄さん」

「Yes ! Your Majesty !」

 

ロロをジェレミアに託し、ルルーシュは蜃気楼で神根島へと一人で向った。

彼を待っていたのは、シャルル、マリアンヌ、V.V.(ブイツー)の3人だった。

死んだ筈のマリアンヌとV.V.(ブイツー)が、何故ここに?

3人共にヒザをつき、ルルーシュに頭を下げ…まるで臣下の様であった。

 

「戻られましたか…ルルーシュ様、ご無事で何よりです」

「ご苦労様でした、ルルーシュ様。少しは休養されるのでしょう?」

「ふふ…今回だけは、流石のルルーシュ様も疲れたみたいだね?」

「まあね。色々と悪知恵を考えるモノだと感心したってところですか。

 しかし…V.V.(ブイツー)も、すっかり死に真似が上手くなったね?」

「まあ、その辺りは年の功かなって事で」

「その若い格好で、そんなの言われても説得力が無いぞ…V.V.(ブイツー)?」

「見た目ってのは相手の判断を鈍らせる一つの武器ですって、ルルーシュ様?」

「ふふ…確かに最もです。ところでマリアンヌ、コーネリアとC.C.(シーツー)は?」

「二人共、もう戻ってます。

 コーネリアも、C.C.(シーツー)も、私がモルドレッドで迎えに…今は服を着替えてます」

「またムダな事を。そんなものは意味が無いのに」

「その辺りは女性ですよ。

 貴方は昔から、その辺りが鈍感なんですから。少しは、シャルルを見習って下さいませ」

「私は、あんなに愛妾を持つつもりはないですよ?」

「全く彼女一途なんだから…ホント、妬けますね」

「マリアンヌも、アーニャの姿なんか中々に可愛いものだったじゃないか。

 ナナリーと並べてみたかったな。良い眼の保養になったのに、全く惜しい事をした」

「それは私も見たかったですな。見たのは、枢木めぐらいですか…余計に腹正しい限りです」

「二人共…か、からかわないで下さい」

 

「ところでシャルル…枢木は、こっちに来てないのか?」

「アヴァロンに潜入させた者の情報ですが、こちらへと向ったと。ビスマルクに相手をさせますよ。

 まあ枢木程度では、相手にもならんでしょうが。それよりも困った事態が起こりました」

「何が有った?」

「フレイヤ開発者、ニーナ・アインシュタインが暗殺されたようです」

「ニーナが殺された?…そうか、ヤツに先手を打たれたな」

「フレイヤは元より、アンチフレイヤなど他者に製造されれば困るとの判断でしょう。

 ロイド・アスプルンド伯爵とセシル・クルーミーに命じて毒殺させた様です」

「セシル…なあ? アイツの作る料理か…特にオニギリなんか毒物以外では無い気もするが。

 アイツの料理って食中毒病原菌入りとか言われても、俺には全く違和感が無いぞ?」

「ははは…確かにその通りですが、何れにせよ真相は闇の中になりそうです」

「止むを得ないか。大分こちらは後手に回ったな。

 だが、まだ遣り様はあるし時間もある。では準備に取り掛かろうか」

「「「All Heil Lelouch !」」」

 

ルルーシュ達4人は、神根島の奥深くに消えていった。

その後、ナイトオブセブン、枢木スザクはシュナイゼルの密命でシャルル暗殺に向った。

だがビスマルクに看過され、ボロボロに叩きのめされて逃げ帰るのが精一杯だった。

そして、そのままルルーシュ達の消息は途絶えた………。

 

 

それから1ケ月後の事だった…ブリタニア帝都ペンドラゴンに激震が走った。

行方不明だった98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアが帝都に戻ったのだ。

しかも信じられない者を二人、引き連れて。

行方不明とされていたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとナイトオブシックス、アーニャ・アールストレイムを。

 

神根島の一件以降、ナイトオブラウンズの全員も、皇帝親衛隊たるロイヤルガードも…

旗艦たるグレートブリタニアと所属空中艦隊の全てが行方知らずだったからだ。

神根島捜索に当った黒の騎士団とシュナイゼルだったが、上空に艦影も無く、かつ神根島が謎の沈没を遂げたからでもあった。

アヴァロンに囚われていたナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグも何時の間にか姿を消していた。

 

その後、シュナイゼル自身も自己の全艦隊と全戦力をカンボジアのトロモ機関に集結。

そのまま沈黙を守ってきたのである…変動する状況の把握に努める為に。

シャルルとルルーシュがどうなったのか把握出来ていない為、不測の事態に備える為に。

だが二人が揃って帝都ペンドラゴンに現れたのは、シュナイゼルにも予想外な出来事であった。

そしてシャルルの演説が帝国、そして全世界に驚愕を走らせた。

ルルーシュとアーニャは、後方でシャルルを優しく見つめていた。

 

「皆の者、私が留守の間に帝国を護った事、実に大儀であった。

 さて、これは皇族全員に周知してある事だが、準備が整った為、ここに正式に発表する。

 第98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアは、本日を持って退位するっ!」

 

この宣言は、流石のシュナイゼルをも驚かされた。だが…それだけではなかった。

 

「な?」

「で、殿下…これは一体?」

「如何いう考えなのだろうね…オデュッセウス義兄上に帝位を譲るのか?

 いや、まてよ? ひょっとしたら父上は、ルルーシュのギアスで操られてるのか?」

「ま、まさか?」

 

「だが退位前に最後の仕事をする事としよう。

 第2皇子シュナイゼルの皇位継承権を剥奪するっ!

 シュナイゼルめは、フレイヤと呼ばれるおぞましい悪魔の兵器を作り上げた。

 しかも我が帝国の民衆3千5百万人をも死に至らしめた…これは大罪である。

 こんなものは戦争ではないっ! ただの虐殺行為に他ならぬ。

 これの手先となりしナイトオブセブン枢木スザクも、ラウンズの地位を剥奪する。

 シュナイゼルの命令により私の暗殺を目論む裏切りの騎士など、ブリタニア騎士道の恥であろう」

 

「なるほどね…こう来たか。皇帝を殺して簒奪するかと思っていたんだけどねえ…譲位させるって事だね」

「やはり…次の皇位は?」

「多分カノンの思ってる通りだろうね…オデュッセウスや、ギネヴィアじゃないだろう。

 やはり…そういう事だね。ならば、こちらも動くだけだ……ん?」

「どうなさいました?」

「いや、何でもないよ。前にも、こんな事があった様な気がしただけさ」

「デジャヴュ…ですか?」

「まあ、ただの気のせいだろうね」

 

シュナイゼルは表情を変えずに映像を見つめていた。

妙な既視感を抱きながら…その心の奥底で、何か鈍い痛みを感じながら。

この時のシュナイゼルは、それが何か判らなかった。

それが判るのは、少し後の事になる…知らぬ方が幸福だったという現実を。

 

「では第99代神聖ブリタニア皇帝を紹介しよう。

 我が息子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだっ!

 ルルーシュは、シュナイゼルや枢木の手で囚われておったのだ。

 エリア11総督たるナナリーも、兄が人質ならば否応も無かったのだろう。

 そのナナリーも、トウキョウ租界諸共に、フレイヤに焼かれて死んだっ!

 そしてシュナイゼルめは、我が皇妃マリアンヌ暗殺を教唆した主犯でもあるっ!

 神聖ブリタニア皇帝として最後の命令を下すっ!

 シュナイゼルめを捕縛した者には、褒美を取らせよう。

 帝国最大の叛逆者めを、捕えよ! 例え死体でも構わぬ。

 新皇帝ルルーシュに栄えあれっ! All Heil Britannia ! All Heil Lelouch !」

「「「「「「「「「「「All Heil Britannia ! All Heil Lelouch !」」」」」」」」」」」

 

簒奪では無く譲位だった為、ブリタニアの混乱は少しでしかなかった。

徐々に内部改革を進めるルルーシュだったが、黒の騎士団とは小康状態でしかない。

均衡が何時崩れるのか? シュナイゼルは如何動くのか?

世界は固唾を飲んで、その推移を見守っていた。

 

そして、ルルーシュがエリア11に向った矢先の事だった…悲劇が起こった。

帝都ペンドラゴンが、ダモクレスのフレイヤで消滅させられたのだ。

ルルーシュの側近としてナイトオブトゥエルヴ・モニカが仕えていたが、それを慌ててルルーシュに報告した。

彼女が狼狽するのもムリはなかった。

 

「それは本当か、モニカ。帝都ペンドラゴンに…フレイヤが?」

「は、はい。帝都ペンドラゴンは完全に消滅したと報告が来ています。

 犠牲者は1億を超えました…ラウンズメンバーは、全員が無事との事です。

 ビスマルク様がダモクレス迎撃に急遽向ったのですが、防御が鉄壁だったと。

 為す術もなくフレイヤを撃たれ、誠に申し訳ないと。

 残念ですがシャルル前皇帝様も、オデュッセウス様やギネヴィア様達も生存は絶望的です…」

「モニカ、他のラウンズの現在位置は何処だ?」

「ナイトオブワン・ビスマルク卿、ナイトオブスリー・ヴァインベルグ卿、

 ナイトオブフォー・エルンスト卿、ナイトオブシックス・アールストレイム卿、

 ナイトオブナイン・エニアグラム卿、全員がこちらへと向っています」

「ナイトオブツー、ジェレミア・ゴットバルトと、ナイトオブイレヴン、ロロ・ランペルージは?」

「直属の配下と共に、帝都ペンドラゴンの調査に向っています」

「モニカ、全軍に非常事態宣言っ! シュナイゼルと決着を付けるぞっ!

 ロイヤルガードとナイトオブラウンズ指揮下の全軍は、エリア11…フジで集結させよ。

 太平洋に展開している全軍も同様に、エリア11に集結させろっ!

 ヤツの目論見が俺の読み通りなら、間違いなくダモクレスは此処に…エリア11に現れる。

 俺が不在なのを見越して、帝都を奇襲したのだからな?」

「All Heil Lelouch !」

 

翌日、ビスマルクは残存兵力を引きつれ、ダモクレス守備部隊を壊滅させた後に合流した。

ダモクレス本体のブレイブルミナスは強固だが、他は違ったからである。

ロイドのアヴァロンも撃沈したが、ダモクレスには手も足も出なかった。

シュナイゼルの戦力は、現在ダモクレスだけとなっていた。

そのダモクレスはエリア11へと向っているのは確実だったが。

 

「きゃつにダメージは与えましたが、ダモクレスを撃破する事が適わず。

 陛下におかれましては、このビスマルク…お詫びのし様もございません」

「ビスマルク、此度は相手が悪かっただけだ。他の誰でも如何しようもなかっただろう。

 父上の仇を、お前の手で取れっ! それが父の、義兄や義姉達への供養ともなる」

「All Heil Lelouch !」

 

「問題は超合集国、黒の騎士団の出方だな。恐らくシュナイゼルの甘言に踊らされてる可能性は高い」

「甘言…でございますか?」

「枢木もだが、多分は日本解放を餌にしてるだろうな?」

「成る程」

「ダモクレスは、西から向ってくるだろう。

 となれば合集国中華辺りを脅すだろう…余り戦力は出さないだろうがな。

 問題は蓬莱島の黒の騎士団だ…総司令の黎星刻は、既に騎士団を離脱したとの報告が来ている」

「ならば抑える者が居ない…と?」

「皇神楽耶・超合集国最高評議会議長にも文句を言ってるそうだからな?

 ゼロは死んだと強引に発表したし…最悪、黒の騎士団だけでも来るだろう。

 シュナイゼルも一応は、元ブリタニアの皇子なんだがな?」

 

ルルーシュの読み通り、黒の騎士団は単独でシュナイゼルと同盟を組んでフジの戦場に現れた。

超合集国最高評議会は、ブリタニアの内乱と判断し、中立を図った。

だが扇は超合集国の決定を無視し、日本を取り戻す為にシュナイゼルと手を組んだ。

黒の騎士団幹部達のゼロ憎しが、その根底にあったのも否めないであろう。

軍部の独走…まさにクーデターと同意であるとも気付かずに。

 

そして遂に、戦端は開かれた……世に言うダモクレス戦役である。

ここで、ルルーシュに誤算が生まれる。

カレンの乗る第9世代型ナイトメア、紅蓮聖天八極式の性能は凄まじかった。

その上、アヴァロンが撃破寸前に完成し、離脱したランスロットアルビオンも圧倒的だった。

この2騎のナイトメアによって、ナイトオブラウンズが次々と落とされていったのだ。

ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグのトリスタンは、紅蓮聖天八極式の輻射波動に焼かれて散った。

ナイトオブフォー、ドロテア・エルンストは、ランスロットアルビオンに真っ二つに斬られた。

カバーに動いたナイトオブナイン、ノネット・エニアグラムも、同じ運命を辿った。

 

ナイトオブシックス、アーニャ・アールストレイムとカレンの対決は、凄まじい死闘となった。

それに巻き込まれ、敵味方双方で落ちたナイトメアも少なくない。

だが騎体の性能差により、アーニャのモルドレッドも空に散る運命だった。

妙な会話を交わしつつ……。

 

「あ〜あ、やられちゃったか。カレン…またね?」

「ええ…実際には騎体の差だけだけど、これも勝負だからゴメン…またね?」

 

ナイトオブツー、ジェレミアとナイトオブイレヴン、ロロは2騎でスザクに向ったが、

その動きの凄まじさに翻弄され二人共に撃墜、その命を落とした…あっと言う間の出来事だった。

ジェレミアはギアスキャンセラーをスザクに掛けた。

これで生きろというギアスは消え、戦闘力は低下を余儀なくされた筈だった。

その上、ロロは時間停止のギアスも使用した。にも関わらず瞬殺された。

 

カレンの騎体は最強だったが、にも関わらず枢木の動きは余りにも異常過ぎた。

グレートブリタニアの艦橋で、ルルーシュはコーネリア、C.C.(シーツー)と戦況を見つめていた。

数は勝るが、2騎のナイトメアで戦術が翻弄されてしまっていたのだ。

そこへ藤堂率いる部隊が攻め込み、乱戦模様となっていた。

必死でナイトオブトゥエルヴ、モニカが戦況を建て直そうと指示を続けて。

 

 まさかラウンズは、ほぼ壊滅状態か…厳しい事になった。

 とはいえ、この状況でカレンまでこちらに配備したら、戦力差がありすぎたのも確かだ。

 枢木の予測外な動きが何とも祟るが、しかし…それにしては?

 

「ランスロットアルビオンは確かにロイドの最高傑作だろうが、にしては変だ。あのロロまで瞬殺ってのは、少し異常すぎないか?」

「ああ、確かに変だな」

「お前も、そう思うかコーネリア?」

「恐らくは、何らかの薬を枢木に投与してると見るべきだろう。

 前線の兵士に興奮剤の類を、恐怖防止に使用するのは有り得る話だが。

 しかしナイトメアのデヴァイサーに使用するなど聞いた事が無いし、危険すぎる。

 ただでさえ精密な操作を要求される繊細なモノなのにな…シュナイゼルの外道めが!」

 

ルルーシュとコーネリアの読み通り、既にスザクにまともな意識は無かった。

既に戦う為だけの戦闘機械と化していたのである。

そしてナイトオブワン、ビスマルクのギャラハッドに襲い掛かるスザク。

もう、まともに喋る事も出来ない状態になっていた。

敵を殺す…ただ、それだけの為に戦う戦闘機械と化していた。

 

苦戦を強いられたビスマルクも、封じていたギアスを全開させて互角の勝負を続けた。

そこに乱入する藤堂の斬月…その時だった。

上空のダモクレスが、真下に来た3騎に目掛けてフレイヤを撃ち込んだのだ。

近距離だけに回避も適わず、3騎はフレイヤの光の中に消滅した。

そして、その爆発はダモクレスを上空高くへと押し上げていった。

 

「ぐ…あんな近距離で、真下にフレイヤを…ま、真下だと?

 い、いかんっ! シュナイゼルの狙いは、これだったのかっ!!」

「へ、陛下っ! ダモクレスが、爆発によって急上昇を……」

「まさかな…フレイヤの爆発を、ダモクレスの推進力に使用するとは考えたものだ。

 そろそろ邪魔になった枢木のランスロットと、ビスマルクを葬れば一石二鳥。

 フレイヤの発射タイミングを見計らっていたのか。

 それにしてもブレイブルミナスの防御が、あそこまで頑丈だとは想定外だった」

 

急上昇し始めるダモクレス。そして、あっと言う間に衛星軌道まで達してしまった。

最早、手が出せない。あそこまでいけるナイトメアなど存在してないのだから。

フレイヤの照準をブリタニア軍中央、グレートブリタニアに向けるダモクレス。

必殺のフレイヤが、ルルーシュのグレートブリタニアに迫った…その時だった。

 

「カ、カレン! 何をする気だ?」

「ルルーシュッ! コレだけは食い止めるけど、後は頼むわよっ!!」

 

いきなり戦線を離脱しフレイヤへと向かうカレンの紅蓮聖天八極式。

扇はカレンの行動を見て、自分の抱いていた疑惑が当たった事を確信した。

そしてルルーシュは映像を見ながら、ただ溜息を付くしか出来なかった…。

 

 ふう…今回は本当に損な役回りだったな、カレン。

 だが、お前の行為も残念だが無意味の様だ…最早こっちには打つ手が無い。

 今回シュナイゼルの勝ちとなるのは、もう致し方ないだろう。

 やはりニーナが殺されたのが、こっちに致命傷になったな。

 フレイヤ対策が出来なかったのが、次の課題というところか。

 

紅い光となって、カレンの紅蓮聖天八極式がフレイヤ目掛けて輻射波動を放つ。

そのままフレイヤへと突っ込み、カレンはフレイヤの爆発の中に消えた。

扇は、藤堂に続きカレンの死と行動に動揺を隠せない。

 

「カレンッ!

 くそお、やはりカレンはルルーシュのギアスに掛かっていたんだ。でなければ、あんな真似なんかする筈が……」

 

衛星軌道上に到達したダモクレスに対し、ルルーシュに残された手は無いと思われた。

シュナイゼルは、冷酷な笑みを浮かべつつ、その本性を剥き出しにし始めた。

 

「ふふふ…フレイヤ照準、蓬莱島、朱禁城、他各国主要都市」

「まもなく全ての照準、揃います…カウントダウンに入ります…10、9、8、7…」

「見るが良いルルーシュ、これで私の勝ちだよ…チャックメイトだ」

「6、5、4、3、2、1…0! 発射しますっ!」

 

シュナイゼルの野望の矢が世界各地に降り注ぐ。

次々と巨大な光の玉が弾け、その光の中で多くの人間が消滅してゆく。

10億、20億、30億…次々と膨らむ犠牲者の山を感知するルルーシュ。

状況を見ながらルルーシュは、全て終わった事を悟った…今回は。

 

「な? 貴様…そこまでする必要が何処にあるというのだっ!?」

 

中華連邦首都・洛陽の朱禁城にもフレイヤが炸裂した。

天子も、黎星刻も、その光の中に消えていった…首都・洛陽は消滅した。

そして合集国日本の本拠たる蓬莱島にもフレイヤが迫った。

扇はヴィレッタに必死で連絡を取ろうとするも、取れた途端に…通信は光と共に途絶えた。

蓬莱島も消滅してしまった…そこに残るは海だけであった。

戦況を見ていた皇神楽耶も、そして超合集国全首脳をも飲み込んで。

扇は錯乱状態寸前になりながらシュナイゼルに通信回線を開いて抗議した。

だが、それは己の死刑判決だと気付きもせずに……。

 

『如何してだ、シュナイゼルっ! 如何して、蓬莱島にフレイヤを撃ったんだっ!?』

「ああ、黒の騎士団の面々かね。有難う…君達の役目も終わったよ」

『な、何?』

「良い時間稼ぎになってくれたよ。やはり廃物利用はするものだね」

『廃物利用だと…俺達がっ!?』

「当然じゃないかね?

 君達などゼロが居なければカスでしかないのだから。自覚をしてなかったのかね?

 所詮、駒は駒でしかないのだよ、君達はね…くくく。

 もう君達は用済みだね、とっとと消えたまえ。斑鳩に照準、フレイヤ発射!」

『き、貴様ぁ…俺達を利用しただけだと言うのかっ!?』

「だから、そう言ってるじゃないか…君達は、バカかね?」

『は、謀ったなあああ、シュナイゼルッ!!! ぐわああああああああっ!!』

 

放たれたフレイヤを満身創痍の斑鳩に止める術も無く、爆発の中に消えていった。

扇要、哀れな裏切りの男の末路だった…黒の騎士団は、事実上…壊滅した。

 

「ふふふ、これで残るはルルーシュのみ…これで全てが終わりだね。

 フレイヤを10発程、まとめてグレートブリタニアに向けて発射したまえ」

『そ、そんな事をすればフジのサクラダイト鉱脈が危険です。

 エリア11そのものも、フレイヤのエネルギーが火山帯を刺激して何が起こるか?』

「構わないよ。サクラダイトも、そんなに必要なくなる。

 何しろナイトメアが不要になるからね。私が、世界を支配するだけだ。

 となれば別にエリア11など、如何なっても構わないだろう?」

 

 後はディートハルトの撮影した映像を世界に知らせれば、ゼロの幻想も消える。

 ふふふ…全ては、私の掌の上だ。無能な人間には、賢き者が導いてやらねばならないのだよ。

 まあ少し人間も増えすぎたし、丁度良い間引きになるだろう…懲らしめにもね?

 これで私に逆らうなどと思う者は、二度と現れまい。私が、世界の支配者となる時が来た。

 歴史上初めての征服者…それが私、シュナイゼル・エル・ブリタニアなのだ。

 

衛星軌道のダモクレスより斑鳩にフレイヤが発射され、黒の騎士団は壊滅した。

そして残ったルルーシュ艦隊に、再度フレイヤの照準が……合わされた。

絶体絶命の窮地に、ルルーシュに起死回生の策はあるのか?

意外な展開が待ち受けてるなどと、勝利を確信したシュナイゼルには想像だにしなかった。

 

知らぬうちに彼は、獅子の尾を踏んでしまっていたのだ。

 

「シュナイゼルゥ…そこまでするのか? 貴様は、何処まで愚かなのだ。

 そこまでして、何の意味があるというのか…一般の民衆にまで…何故だ?」

「陛下、ダモクレスがフレイヤ照準を変更…標的は、このグレートブリタニアです。

 エネルギー量からして、フレイヤが10発は撃たれる危険があります」

「そうか…判ったモニカ、今迄ご苦労だった。

 最早ここまでだな…このままでは、日本列島そのものが崩壊しかねない。

 コーネリア、C.C.(シーツー)…最終手段を発動! 俺がラグナレクに干渉する」

「タイムリミット…だな」

「止むを得ないだろ…しかし、こんなのは初めてだ。

 色んな意味で、前代未聞な展開だったな。まあ楽しめたから良しとすべきだろ」

「それだけシュナイゼルが恐ろしい相手だったって事だ…やるぞっ!」

 

この時、いきなりルルーシュの全身が紅く光り始めた。

そしてルルーシュの両目に浮かび上がるギアス。だが、これまでのギアスとは何処かが違っていた。

 

 

 

『Ragnarek ! Emergency System Start ! Elimination(消去)、The Aim is Freya(目標フレイヤ)』

 

『Roger Master………

 Elimination Freya (フレイヤを消去します)、Elimination Completion(消去完了)!』

 

グレートブリタニアに向うフレイヤが、艦に爆発直撃するかに思われた瞬間だった。

ルルーシュと謎の声がフジに響き渡り、爆発途中で雲散霧消してしまった。

一体、何が起こったのか? 其処に居る者の大多数は驚愕するだけだった。

そして響き渡るルルーシュの声が、何故か全人類の頭に直接響いた…如何して?

 

『Ragnarek ! Program < Sword of Arkasha >……All Start Stop(全起動停止) ! 』

 

その瞬間、シュナイゼルは愕然としてしまった。

何故なら…ルルーシュの一言が世界に響き渡ると同時に、何もかも全てが停止したからだ。

副官のカノンも、ディートハルトも…全ての兵士達も、まるで人形の如く動かない。

ダモクレスの全システムさえも停止し、真っ暗に…この時、正に世界の時は止まった。

そしてダモクレス内の司令室のスクリーンに強制通信が入る…相手はルルーシュだった。

 

「これはこれは、ルルーシュじゃないか…久しぶりだね。 どんな手品を使ったのか是非とも教えて欲しいんだが?」

『別に大した事では無いさ、シュナイゼル。

 ラグナレクによって、フレイヤの爆発そのものという事象を消去しただけだ。

 そして全員が、全ての機械すらも、時すらも停止したのも当たり前の事だ。

 貴様以外はプログラムである<アーカーシャの剣>の範疇、起動停止しただけに過ぎん』

「ラグナレク? プログラム<アーカーシャの剣>? 正気なのかい??」

『ラグナレクとは、この世界を管理運営している生体コンピューターシステムの総称。

 そして<アーカーシャの剣>とは、この電脳世界のゲームプログラムそのものさ。

 どれだけのゲーム回数を行って来たのかまでは今すぐに即答しかねるが、

 人類は皇暦2017年9月からの2年間という限られた年月を繰り返し続けているんだ。

 タイムリミットは2019年9月9日の24時まで…とね?』

「ルルーシュ、それは、如何いう意味だい? 君は私を、からかっているのかい?」

 

『シュナイゼル、今回ばかりは流石に貴様は少々遣り過ぎたようだ。

 フレイヤという兵器は、前回まで存在しなかったんだが、全く恐れ入ったよ。

 これほどの大量破壊兵器を考案させてしまうとは…これも人間の可能性というべきかな?

 人の一途な想いと凄さは、俺も十二分に理解してたつもりだったんだがね』

「ルルーシュ、私には君が何を言ってるのか判らないんだが?」

『そもそも、この世界を作り上げたのは我々なんだ。

 貴様達は、電脳世界の中に居るプログラムの駒に過ぎないんだよ』

「ふふ、何をバカな事を…何の世迷い事を言っているのかね?」

 

シュナイゼルは呆然とする他は無かった。自分の知っているルルーシュとは全く違っていたからだ。

荒唐無稽としか思えない事を言ってるのに、何故かそれを否定出来ないジレンマ。

余りにも年の差を感じさせる…それが余計にシュナイゼルを苛立たせていた。

 

『今迄に色々な結果があったよ…そういえば貴様が世界制覇したのもあったな。

 逆に俺が勝つのがあるのも当然だが、色んな分岐があったりして多種多様だ。

 そうそう、悪逆皇帝として忌み嫌われた俺が、枢木扮するゼロに殺されるってのもな。

 だが一時期、同じ結末ばかりを迎える様になってしまった事があってな?

 これは設定の問題もあったが、俺という人間そのものの個性という結論が出た。

 毎回同じ結果ばかりでは詰まらないだろう?

 だから俺のコピーではなく、試しに俺自身がゲームに参加したら結果が変わったんだ。

 そこで、仲間も同じ様にゲームに参加し始めたって事だ。

 何しろ我々に取って、余りにも時間は無限なのでね…如何にも退屈なのさ。

 繰り返しの連鎖の中で、我々自らがキャラに参加しゲームに干渉する様になった。

 当然だろう? 我々はゲームマスターなのだから。まあ出来るだけ、禁じ手は使わない様にするがね。

 我々だけは死ねば元の世界に帰還するだけに過ぎないが、死ぬ際の痛みは感じる。

 よりリアリティに…そこがコンセプトなんだよ。究極の体験ゲームってところかな』

 

 

「この世界が、君の作り上げたゲームワールド? そんな事など有り得ないよ」

『別に今、信じろとは言わない…どうせ何れ判るだけの事だ。

 それと貴様が、確かに神聖ブリタニア帝国の皇子だったのは歴史上の事実だよ。

 まあ1万2千年程の昔になるんだけどね…皇暦2019年というのは。

 そして貴様自身が、人類を滅亡させた張本人でもある…核という大量破壊兵器に拠ってね?』

「なっ!?」

『だからこそ、その要素のみは人類の記憶から完全に除外していたんだよ。

 ニーナ・アインシュタインの執念だったのかも知れないね、フレイヤを生み出したのは?

 今回は、確かに大きなイレギュラーの連続だったからね。

 あれほどにニーナが、ユーフェミアへの禁じられた愛に殉ずるとは予想外だったんだよ。

 しかも、貴様は彼女を秘密裡に抹殺してしまった。こっちのプログラム上でも袋小路だ。

 他の者にフレイヤを、そしてアンチフレイヤシステムの構築をさせぬために。

 だから最終手段を使うしかないまで我等を…創造主を追い詰めたのは感歎したよ。

 流石は、人類を滅亡させた男だね。己の欲望の為には手段を選ばないエゴイスト。

 なかなか楽しめたのは確かだったな…貴様は、常にラスボスキャラだからね。

 貴様だけはゲーム上での制約を外してるんだ。そうでなければゲームにならないだろ?』

 

「………なかなか面白い作り話だったね、ルルーシュ」

『作り話と現実を認めないのは構わないんだが、そろそろゲームオーバーだ。

 今回は流石に、貴様は人を殺し過ぎたよ…一体全体、何億人が死んだと思うんだね?

 貴様は、帝都ペンドラゴンまで消滅させてしまっただろう?

 敵の本拠を叩き、皇族殆どを抹殺するのは戦略として間違ってはいないが、

 その上に世界各国の首都全てと主要都市を、そのフレイヤで吹き飛ばしてしまった。

 既に45億人は死んだとのデータが出ている…なんと世界人口の約3/4だ。

 ゲームの設定最低基準を、大きくオーバーするのは禁忌って決めててね?

 これじゃ勝者は居ないも同然だ…ここでゲーム終了、リセットさせてもらうよ』

「リ、リセットだって?」

『理性的な貴様らしくないね…意外に物分りが悪いじゃないか。

 言っただろう? 全ては虚構だって…人を見下している貴様も、立場は同じ。

 所詮、貴様自身も駒でしか無かったんだって事を。

 だけど、それは貴様の意思でもある。貴様だけは一切、我々がコントロールしてないのだから』

「え?」

『貴様自身の身体だけは回収していたんだ。他にも居るんだけどね。

 黒の騎士団の人間が多いのも皮肉なものだが…扇とか、玉城とか、藤堂とかね。

 重要人物は大概、死んだ後に回収出来たのが幸運だったのもある。

 皇神楽耶、黎星刻、天子、桐原泰三、ナイトオブラウンズなんかもね。

 ああ、そうそうカノンも居たなあ…彼の君に対する忠誠心は実に見上げたものだ』

「バカなっ! そんなバカな事など有り得ないっ!!」

『その中で、貴様は一番強固な意志力を持っていたのは皮肉だな。

 ふふ…では現実を見せてあげよう。今の貴様自身の本当の姿というものを』

「私の本当の姿……だって?」

 

『Ragnarek ! Program ………Reset ! 』

 

『Roger Master !』

 

ルルーシュの言葉に背筋が寒くなったシュナイゼルは、怯えを強く感じていた。

その瞬間、ダモクレスが…そしてカノンが、周りの人間の身体が光となって消えて行く。

何故か外の光景が脳裏に浮かぶ。全ての空中艦艇が、ナイトメアが消えて行く。

世界そのものが崩壊してゆき、愕然とするシュナイゼルの意識は何処かへと飛ばされた。

 

そして、何かのカプセルの中に居る自分自身に気付く。

身体を完全に拘束され、顔をマスクで覆われ、後頭部と身体全体に何か接続されているのを。

 

 そうだ…思い出した。此処は冬眠カプセルのプラントだった。

 同じカプセルが並ぶ…どれくらいの数があるのか見当もつかない。

 此処は、まるで養殖場だ…何億もの人間を再生する為の。

 呆然と辺りを見回し視力が回復してくると、私は気付いた。

 カプセルの前に浮いている男の顔を…ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの姿を。

 

 そうだ…此処を私は知っている…覚えている…此処は地獄だという現実を。

 人類は、既に滅亡していた…生きてるのは、あのバケモノ達だけだ。

 この記憶だけ封印されて何時も私は、あの世界に戻されていたのだ。

 この屈辱を忘れさせられて…私は絶叫したかった。

 だが顔を覆うマスクが、それを許さなかった。

 私が何故、何時も反逆しようとするのか…全ては、この記憶ゆえだったのか。

 

『ふふ…シュナイゼル。それが今の貴様の本当の姿だよ。

 右隣がオデュッセウスにクロヴィス、左がギネヴィア、カリーヌ、ユーフェミア。

 そこはプラントの中枢部だからね。貴様が、当然ながら真ん中に居るという訳だ。

 それに黒の騎士団の面々も、お前の下で勢揃いだ。

 全く扇にしろ、藤堂にしろ、四聖剣の朝比奈や千葉にしろ毎回、何かするのが不思議だよ。

 今回は神楽耶と星刻なんかはマトモだったのに、まとめて彼女達までをフレイヤでボン…とはね?

 手当たり次第を吹き飛ばすって神経が、如何にも俺には理解出来ない。

 まあ余りにも強力な力を持ち過ぎて、神にでもなった気分だったのかな?』

「あ、悪魔めっ!!」

『貴様にだけは言われたくないものだが、まあ否定しきれんのも事実ではあるな。

 その中で完全体なのは貴様のみ。他の者は、多かれ少なかれ欠損が存在してる。

 だから失った箇所を、我々は時間を掛けてクローン再生を施してるんだ。

 そのカプセルの中では冬眠状態と同じだから、時は止まってるのと同じだ。

 オデュッセウスもギネヴィアもだが、皆に擬似的な記憶を与えてある。

 何しろ全員が放射線障害で、大半の記憶を失っていたからな。

 肉体も放射能でアウト…クローン再生する他は無かったんだ。

 人類という意味で、あの地獄を生き残ったのは貴様一人だよ…シュナイゼル?』

「コ、コーネリアは? シャルル皇帝とマリアンヌ様は?」

『ああ…皆、此処に居るぞ?』

 

そのルルーシュの言葉と共に、その空間に現れる者達。

コーネリア、シャルル、マリアンヌ、V.V.(ブイツー)、C.C.(シーツー)、そしてカレン。

皆が冷たい眼で、シュナイゼルを見下していた。

コーネリアだけは、喋りながら少し離れた場所に居るヴィレッタに視線を移したが。

 

『何時もカッコつけの貴方も、そうなると形無しですね。

 しかしヴィレッタよ。お前は如何して、毎回そのイレヴンで道を踏み外すのだろうな?』

『ふふふふ…何時もながら良い格好だなあ、シュナイゼルよ。これも因果応報よな?』

『今回も私って、貴方の手の者に殺されちゃったじゃないのよ?』

『ルルさあ、今度は僕をコイツの敵にしてくれない?』

『そもそも晒し者になったのも、全ては己の業だろうが?』

『毎回々々、ホンットに外道よねえ…アンタってさ?

 自分が被害者みたいな顔をしてるけど、アンタって人類滅亡の張本人なんだからね。

 生き残ってるのって私達、7名だけなんだから…今の状況を見てみなさい?

 アンタが犯した罪業ってモノをね。さあ見なさいよっ! アンタの罪の全てをっ!』

 

 そして映し出される景色…それは砂漠だった…砂嵐が吹きすさぶだけの。

 自然などは何一つ残されていない、生命の息吹の欠片すらない世界。

 地球の大半は、岩か砂漠と化していたのだ。

 これを自分がしたというのか? 私は、絶望感に苛まれた。

 

 そうか、そうだったのだ…何時も感じていた虚無感は、ここから来ていたのだ。

 全ては自分の欲望による業が、この惨劇を起こしていたのだ。

 私は、全てを思いだした…過去の自分の行った悪業を。

 何時の間にか、私の眼から涙が止まらなかった…私は、取り返しのつかない事をしたのだ。

 

 世界制服という、欲望に飲み込まれた過去の私が犯した罪を。

 義弟や義妹を殺し、次々に敵を侵略して隷属させ、多くの血に塗れ血に狂ったかつての自分自身。

 実の父や母、弟、妹達の言う事に耳も貸さずに歩んだ流血の道。

 終いには最終兵器たる核兵器で、最後の敵だった中華連邦と共に滅亡した。

 人類だけでなく、全生命を、植物すらも道連れにして……何という悪業だ。

 

 だからこそ私は、常にゲームの駒として敵になるしか選択肢を与えられなかった。

 私は、またこの記憶を封印されるのだろう…次のゲームが始まった時に。

 僅か2年という期間を繰り返す為の駒の一つでしかない。

 一体どれだけ繰り返して来たのかは、もう私にも判らない。

 このリフレインは永遠に続くのだろうか?

 終わった後に何時も起こる虚無感は、私から消え去る事は無いのだろう。

 

 頼む、ルルーシュッ! いや…父上っ!

 愚かな私に、永遠の眠りを与えてくれええええええええええええええっ!

 

何時の間にかルルーシュ達は、彼の目の前から消えていた。

シュナイゼルの叫びが誰にも届く筈もなく、全ては虚無の中に溶けていった。

彼こそは、大罪を背負った孤独な永遠の虜囚だった。

今迄も数限りなく繰り返されてきた地獄…そして、これからも続く悪夢の日々。

彼にとって、救いなど有り得ないのだから………。

 

「結構、今回って色々と波乱万丈で楽しめたわよねえ、ルル?

 私なんか人質にまでされて、ガラスの牢獄で晒し者状態にまでなったもの。

 でもまあ、ウザクのヤツを散々と殴れたから少しは気分が晴れたけど。

 あ〜あ、もっとウザクを殴っておくんだったな〜。

 どうせならジョフレアッパーして〜、スマッシュでボディブローに〜……」

「まさか、その後でガゼルパンチとデンプシーロールのコンボじゃないだろうな?」

「あったり〜」

「そりゃまあカレンはボクシング好きだったけど…って、お前インファイターだったっけ?」

「ウザクのボディを思いっきり殴れたから、意外に気持ち良かったのよ。

 8の字ローリングでドカンドカンって殴る度に出る音が、実に気持ち良かったわあ〜」

「ちょっと待てっ? なんで殴るのに、そんな音が出るんだ?」

「だって、ウザクの腹筋って鉄の塊みたいなものよ?」

「はあっ???」

「あんなの人間じゃないでしょ?

 筋肉脳だし、知恵なんか赤ちゃん並みだし。でないと、機関銃を蹴飛ばしてブチ壊すなんか出来ないわよ」

「そうか…ウザクって、ホントに人間離れしてるんじゃなくてホントに人外だったのか」

「ああ、害の字ね」

 

 ……何かが猛烈に違う気がするんだが、本当に良いのか?

 いや、気にしたら負けだ…きっとそうだ…そうに違いない。

 これは現実逃避なんかじゃない。ポジティヴに発想を変えただけだ(そうかあ?)

 

「そうか、それなら私も参戦したかったものだな。

 是非、ジョルトのクロスカウンターでもお見舞いしたかったものだ。

 ルルの頭を踏みつけたそうではないか。

 それなら、私の鉄拳を披露するチャンスだったのに残念だ」

「コーネリアまで…二人とも、某漫画の見過ぎだよ…はあ(溜息)」

「良いじゃない。時間なんか、たっぷりあるんだから」

「そうだぞルル?」

「へえ、なら私はハートブレイクショットかな〜?」

「マリアンヌ、お前もか?」

 

「あのねえルル?」

「どうしたヴァイン?」

「僕達全員がコードユーザーじゃない」

「だな…止むを得ずになった身体だが、後悔してるのか?」

「身内の恥を注ぐ事自体に悔いは無いんだよね。だけどさ?」

「ん?」

「次回は、設定を変えようよ〜。

 僕、今度はルルの兄弟役が良いな〜。今回の、ロロが羨ましくて仕方なかったもん」

「あ…じゃあ私は、ルルの彼女が良いな。母親役ばかりってのも飽きたもの」

「マリアンヌ…そもそも、お前は俺の実の娘だろうが?

 ……ったく皆、俺とコーネリアの子供だってのに。

 お前達を時の牢獄に入れてしまったのは、ホントに申し訳ないんだが…な」

「父上、別に後悔はしておりませんよ。長男である兄シュナイゼルの犯した罪は我等で償うと」

「ですよ父さん、仕方無いじゃないですか」

「ええ、ポジティヴにですよ父様」

「シャルル、カレン、セレン…そうか…そうだな」

「玉に後ろ向きになるのが、ルルの欠点だぞ?」

 

「コーネリア、俺は良い家族を持ったよ。アイツは俺の不肖の長男の贖罪だからな。

 にしてもだ…あの極道息子は毎回々々、如何して…ああも外道に走るのやら。

 実の父親として、アイツを物忘れの酷い鶏冠頭と考えたくは無いのだがな」

「確かにアレが、私の初めてお腹を痛めて生んだ我が子だと思うと情けなくなる。

 次回は、どんな愛の鞭をくれてやろう? いかんな、段々と腹が立って来たぞ」

「お、おいおい? コーネリア、少し落ち着け……なああああっ?(ブチュ)」

「ふふふ、少し鬱憤晴らしに付き合え。

 私も久しぶりに生身の肉体なんだ。今晩は寝かさないからな、ルル?」

「あ〜っ? それって母さん、ズッルゥ〜イ」

「カレンの言う通りですよお」

「私も、パパに抱いて欲しいのにぃ〜」

「ルルは私の旦那様なのだからな。当然だろうが、カレン、セレン、マリアンヌ? ぐふふ……」

 

いきなりコーネリアのディープキスに顔を真っ赤に染めるルルーシュ。

そこへ右からカレン、左から C.C.(シーツー)ことセレン、後ろからマリアンヌが抱きつく。

何時の間にか現れた目の前の巨大なベッドが、これからの帰趨を示しているのは明白だった。

 

 何か肉食獣の餌食みたいな気がするのは何故なのだろう?

 ちょっと待て? 何時の間にかシャルルにヴァインまでいないだと? アイツ等、何時の間に逃げたんだか?

 二人共に逃げ足は速くなったものだが、親子って何なんだろうな?

 この身体では、近親相姦も説得力が薄いのは確かだが。

 

 下手すれば、今日は5Pか…ふう、暫くは地獄だな。

 贅沢を言うな? ハーレム状態が羨ましいだと? なら何時でも俺と代わってやるから、コッチの世界に来い。

 だが、まあ覚悟だけはしておくんだな。アイツ等の精力は生半可じゃないぞ?

 こんな時だけは不老不死の身体が憂鬱だが、もう覚悟を決めるしか無いか。

 何しろ選択権は、これに関してだけは俺には無いのだから。

 

 全員が子供が出来る身体じゃ無くなってしまったのが、もう遠い過去になってしまったし。

 1万年と2千年前から愛してる〜とか云々を、前に聞いたのは何処でだったか?

 親子でありながら、全員が運命共同体なのは確かだからな。

 俺達家族は、時の流れから取り残された存在なのだから。

 

 コードユーザーは不老不死と引き換えに、生殖機能が失われる。

 つまり性行為は問題ないが、子孫は残せない。

 だからインモラルな禁忌が失われたのって何時だったか忘れてしまった。

 俺は欲望に目を輝かせる4人を見ながら、精神を遥か彼方へと飛ばしていた。

 

 この死の惑星が甦るのには、あとどれくらい掛かるものやら…どうにも先は遠い。

 地表から放射能が消え去れば、徐々に植樹していかなければならない。

 大気汚染の大半が解消しなければ、地球再生計画の次のステップに進めない。

 ようやく大地は俺達の努力が身を結び、徐々に蘇りつつあるのだから………。

 

 まあ不老不死である以上、俺達は永遠という時間を過ごさなければならない。

 人類を甦らせる為に俺達が選んだ道だし、それを別に後悔などしてない。

 だが如何せん暇な日々なのでな…ハーレム状態は疲れるだけなんだが止むを得まい。

 にしても次は、どんな風に俺達を楽しませてくれるのかな…我が息子シュナイゼル、永遠の罪人よ。

 

 お前が解放される時は、俺達以外の兄弟や妹、皇族、ブリタニアの民衆から許しを得たらだ。

 まあ、そんなことなど万に一つも有り得ないと思うがな?

 俺達も、お前を監視する役目があるんだ。お前が、人類全ての憎悪を受ける日まで。

 お前が家族だからこそ、これは俺達が敢えて受け入れた運命なのだから。

 

 それにしても何時まで続くのだろうか…この時が止まった世界は?

 努力した者が、全て報われるとは限らないのが現実なのも確か。

 しかし成功した者は、すべからく皆が努力を惜しまないのが当然だ。

 そうでなければ何も為せはしないし、何事も前に進めはしない。

 如何に道程が険しくとも、諦める事など俺には断じて許されんのだから。

 何を為すにせよ俺は努力を怠る訳にはいかないし、それが最後の王としての務めだ。

 

 さて…それはともかく次回は、どんな設定にするか思案のしどころだ。

 どうせならば楽しまなければ詰まらない。長い悠久の時の流れの中でな………。

 

 

 

後書きにかえて

これは私が書いていた頃の最後に書いた短編です(苦笑)

最初は、ルルーシュがシュナイゼルの父親にする予定じゃなかったのですが。

書いてたら何時の間にかルルーシュ×コーネリアになってたのが不思議です。

カレンやシャルル、マリアンヌ達までルルーシュとコーネリアの実子って、あれえ??

もし、このギアス世界の全てが虚構だとしたら?って設定を思い付いただけなんですけれどね。

まあ「マトリックス」みたいな電脳世界ネタです。実は全て一部の人間によって作られた世界だったってのはアリガチな設定ですけど。

シュナイゼルがメタメタですが、ルルーシュ達も実際は地獄な訳で。これって誰にも全然、救いが無いよなあ?というお話でした。

加筆改稿してみたら字数が少しだけ増えましたが(何処が?)こんな話でも楽しんで貰えると幸いです。

 

 

 

12.11.11加筆改稿版up

 

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